【文スト】中原中也の新相棒には問題があり過ぎる。【中原中也】【男主】

４ ページ11

「じゃ、手前が行って来いよ！
どうせ標的(会長)はイベントに出るってだけだからな。そこまで言うなら、この先の会場は手前一人で見てくればいいだろうが！」


と、半ば車から押し出すようにして、というか実際に蹴り出したのが二分前。そう、たったの二分である。

――― それが、何故こうなったんだ。

愕然とした顔を隠せないままの俺が、後部座席の窓ガラスから外を窺うと……そこには。



「あ、あの…もしかしてお一人ですか。良かったら、その……！」

「ねーお兄さん、ウチらと来なーい？」

「えぇ、エミ〜、マジで誘うの？…でもいっか、めっちゃ恰好いいし。じゃあお兄さん、来よーよ、可愛い女の子いっぱいだよ？」

「いや！ここは私達と一緒に映画見に行きましょう！チケット余ってるし！」

「わぁ、すっごい可愛いＴシャツですね〜！何処で売ってたんですか？」



いったい、何がどうなってやがる。なんで女が大群で群がっている？
あと最後の女、美的センス狂ってるぞ。

確かに、奴は顔が良い。頗る良い。それは俺も初対面の時に思ったし、今も認めている。……クソニートの唯一の長所として。だが。


「あはは、すごい囲まれちゃったな……さぁて、どうしよう。」

じゃねぇよ！
さっさと追っ払え。で、任務に集中しろ。

頭の中で命じてみるも、十六夜は曖昧な微笑を浮かべたまま。困ったな、とばかりに周りを見回すだけだ。あ、こっちを見やがった。


「ッ……！あの野郎……！」

ウインクを一発キメられ、何を言いたいのか大体の予想がついてしまう。
『俺は動けないから、代わりに任務よろしくね☆』＿＿＿こいつ！


舌打ちを禁じ得ないことに、気付いてしまった。この展開が十六夜によって仕組まれたものだと。

あの野郎、最初の女が寄って来た時、接近に気付いていたのに素知らぬフリを決め込んでいたのだ。まんまと横に一人寄れば、後は早いもの。どこからか湧いて出た他の奴まで勝手に加わる。で、結果、あれだ。でも。



「……幾ら何でもモテすぎなんじゃ…」

運転席からの声が脳内の感想と重なり、一瞬、心の声が漏れたかと驚く。動揺してミラーに視線を遣ったら、運転をしていた構成員と目が合い「す、すみません！」と謝られた。

それで少し冷静になり、仕方ないか、と溜息を吐く。そもそもあのニート男に期待はしていないのだから。

どっちみち、此処は自分で見てくるしかなさそうだ。重い腰をシートから持ち上げ、ドアを開いた。

５→←３

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す