Dracula La＊４

▽ Yside ページ38

「知り合いというか…顔見知りって感じです」

苦笑いするA。




「どういうこと？」




「えっと…まぁ」

言葉を濁すってことは、何かあったのだろう。




「…ここじゃ話せない話？」




「いやっ、そんなことはないですけど…」




「言い寄られたりした？」




「っ、」

…やっぱりそうだったのか。




「…私だけじゃなくて色んな女の子にちょっかい出してるらしいですよ？」




「…ろくでもない野郎だな」

そんな奴がAと同じ大学にいるだなんて思うと更に気分が悪い。




「でも、さっき洋平さんが来てくれたとき、私が洋平さんと付き合ってるって悟ったと思います」

だからもう話しかけてこないですよきっと、とAは言うけれど


…そんな確証ないじゃん。




自分が大学生だった頃を思い出したら余計心配になる。




俺の気分が晴れない一方で、Aは

「今日、皆さんリハーサルですよね？私はもう大丈夫なんで…」

だなんて言ってきて。




…まだ足首腫れてるのに。




「Aは気にしなくていいから」

そう言って頭を撫でると




「あ、磯部さん…」

ヒロが戻ってきて




「ごめん遅くなった

…これ、湿布と氷嚢ね」




「サンキュ。水入れてくるわ」




俺がソファから立ち上がってトイレに向かおうとすると、わざわざすみません、とAがヒロに言うのが聞こえた。







.







氷嚢に水を入れ、受付に戻ろうとすると



「あ、さっきの…」

Aに怪我をさせた奴が俺に声をかけてきた。



…岡田、だっけ。





「なに？」

つい、不機嫌な声が出る。







「…いや、その、Aちゃんは…」




「怪我させたことなら許すつもりはないけど、それよりもこれから先、Aに近付くな」


俺がそう言うと、




「…はい、すみません」


すっかり縮こまった様子。







…多分、これで大丈夫なはず。









.







受付に戻ると、


「洋平おせーよ(笑)」


とヒロ。






「あーごめん。

…はい、A。しばらくあてて冷やして」



Aに氷嚢を渡す。





「本当にありがとうございました…」


氷嚢を足首にあてたAは痛いのか、冷たいのか、少し顔を歪めた。





「じゃ、俺らそろそろスタジオ戻るわ」


ヒロがそう言うと、




「私のせいでリハーサル始めるのが遅くなってしまって本当にごめんなさい」


とAは申し訳なさそうな表情で呟いた。

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