308. ページ8
「何で尾形なんだよ」
「猫ちゃんっぽいからじゃ無い？」
杉元くんは確かにポイなと同意してくれたのだが、谷垣さんや月島さんは鯉登くんの発言に、黙り込んでしまっていた。
一体どうしたんだろう…？空気が重い。
この空気中、鯉登くんが“山猫の子供は山猫…”と言った。
「どう言う意味だ？」
「山猫は“芸者”を指す隠語だ。師団の一部の連中が言っていた下らない軽口だ」
「うっわ、下らな。いつの時代も変わらないなぁ」
「本当に下らねえな…」
あの尾形さんがそんな事を言われていたのか…
尾形さんの性格上気にしなさそうだけど、やっぱり心の何処かでは良い気はしていないだろう。
尾形さんから隠れて、影でコソコソ言っている人達の姿が目に浮かんで、胸糞悪くなった。
「あの性格だ、嫌ってる人間も少なくない。私も大嫌いだ。それに、“山猫”にはインチキとか人を化かす意味の隠語もあるだろう？山猫会社とか…。下らん軽口だが、しかし案の定…ではないか。違うか？杉元」
鯉登くんに聞かれるが肯定も否定もせず、黙り込んで一点を見詰めている杉元くんは、一体何を思っているのだろうか。
更に重くなった空気の中、チカパシくんは続きが気になる様で、メコオヤシがどうなったのかをエノノカちゃんに問い掛けた。
「後で荷物取りに戻ったら足跡いっぱいあって、荷物全部ないの。服も靴も袋もぜーんぶ」
「食べちゃったの？」
「かもね」
「タバコ入れも？」
「いや…タバコ入れは臭いから食べないと思う」
「怖い…」
食べはしないだろうけど、話を聞く限り何処かへと持って行ってしまったんだろうな。
怖いと怯えてぎゅうと私の腕を掴むチカパシくんを撫でてやる。
「その変な話に教訓があるとすれば…“泥棒猫は撃ち殺せ”だ」
「物騒過ぎでしょ。“捕まえて調教”にしよう？」
「ふん…甘いな。調教した所で繰り返すに決まっている。何も変わらないさ」
「死んでしまったら、変わるものも変われないよ。…生まれ変わりがあるのなら別だけど」
「生まれ変われば…な」
鯉登くんはそう言うけれど、私はそうは思わない。
根気強く教えれば、いつかは分かってくれる筈だと思っている。…まあ、信頼が無ければ程遠いだろうけど。
誰にでもチャンスはあるのだから。そう、誰にでも…ね。
翌朝。
出発の準備をしている中で、谷垣さんはムチリとした身体を丸めながらカネモチを作り、杉元くんは先程からずっと岩息さんの写しをジッと眺めていた。何か分かったのだろうか？
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 121人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
カピバラ(プロフ) - なっちゃんさん» コメありがとうございます！ドキドキして頂けたのなら良かったです！もどかしい展開をしていければと思っておりますので、今後とも宜しくお願い致します。 (2023年4月4日 23時) (
レス) id: 6c01959b81 (このIDを非表示/違反報告)
なっちゃん(プロフ) - 女主ちゃんと軍曹の絡み毎回楽しいです。ドキドキキュンします！軍曹なんて言おうとしたの〜><！！ (2023年4月4日 12時) (レス) @page41 id: f79473b3d6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：カピバラ | 作成日時：2023年2月22日 3時
