冬の夕暮れ.シェラ ページ2
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白なんとなく境界線に行ってみたくなって、コートを着た。季節はもう冬で、澄んだ空気に触れるのはなんだか怖くて、人の多い街へと足が向いた。
白既に日が傾き始めた通りのショーウィンドウに映った自分の姿を見て、思わず右目を確認する。重たげなロングコートが全身を覆い隠していた。
白コートは脱げない。昔仕事でここへ着ていた名残のように、中に仕事着としてのシスター服を着ているから。気も抜けない。昔ここで犯した罪を繰り返したくないから。
「それでも、……ふしぎ」
冬は寒いから、よけいに暖かさを感じられる。肌をかため孤独をあおるような冷たさの風が呼び覚ますノスタルジーは、夕日に嫌いになりきれないような過去をうつし出した。なつかしくて、せつないもの。
白気分転換のつもりだったので長居は無用だ。そろそろ帰ろうかと街に踵を返そうと振り返った。誰かに呼ばれたように、西日が視界を占めた。目を灼くほどではない、それでもかすかな痛みに似た幸せの色をした夕日だ。
「ねぇっ、そこのあなた?」
白だから、夕日から出てきたかと思ったのだ。落日の空のような髪からふわりと甘い匂いをたなびかせて、宵空のような目を細めた彼女を。
目が合って微笑まれた瞬間、胸が高鳴った。夕暮れのようなひとだと思った。
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作者名:しぇるふぃあ。×ルンピカ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/shelpla/
作成日時:2020年3月27日 18時