20話 ページ24
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ピリッとした痛みが走る頬を手の甲で拭った。
春香……は無事だな。ナイフ持ってやがるってこたァ本気出すことにはしたんだろうが、余裕ありそうだ。
で、うちの大将蓬莱サマはっと。……あいつ足の骨折りやがったのか。いや、捻れてるだけ？ どっちにしろ重症……。しかもあいつ、ローブ脱いでんのか。
マジじゃねぇか。
目の端に映る情報から二人の戦況を推測。情報屋の力は戦闘時にも発揮される。
そして、あたしは……。
四梛木麻日奈。冷静なのは知ってたが、ここまで煽りがいがねぇ上に正確なアイピ捌きとくると、正直、厳しい。
あたしのスピードに慣れてきてやがる。早いうちにカタをつけなきゃ、凛の加勢に行けねえ。
「……こいつを使うしかねぇか……」
「……」
保たれていた距離。蓮水が目を瞑り、手首に着けていたリストバンドに手をかけたところで、麻日奈は距離を詰めた。隙だらけの佇まいに、容赦なくアイスピックを振り上げる。
が。
「！？ が……ッ」
その場には、蓮水の黒いローブだけが残っていた。麻日奈の瞳がそれを認識した瞬間、壮絶な息苦しさを覚える。
キリキリキリ……嫌な音がすぐそばで聞こえた。
何とか振り返る。麻日奈の首を絞めるワイヤーの先が、蓮水の手首に巻き付いていた。その下に描かれる鳳凰に桜が舞った刺青。リストバンドで隠していたのだ。
「あたしに
「ッ……六乙！！」
「！」
ヒュンッ。その名を呼んだ瞬間、ナイフが麻日奈の手元にあった。代わりにアイスピックが消えている。
交換、したのか。投げて……？ 向こうでも戦ってるだろうに。どんだけの投擲の正確さだよ。
額に滲む冷や汗を誤魔化して、蓮水はハッと笑った。
「そいつで切ろうとでも？ 残念だが、このワイヤーはそんなもんじゃ切れな──」
ザクッ。鈍い音。次の瞬間、咲良の右手に激痛が走った。
「うッ、ぐ！！？」
親指と人差し指の間の付け根を、銀色に光るナイフが貫いた。力が抜け、ワイヤーが手から離れていく。
滴り落ちる鮮血。向こうで春香が「咲良！！」と悲鳴を上げたのが聞こえたが、そんな彼女にアイスピックを手にした玖穏路が襲いかかっている。
「よそ見なんて、いい度胸してるねッ！」
「ッ……！」
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