運命130＃ ただの ページ6
「なるほど、自滅を狙うんだな」
「そうやって、イタリアの動き自体を止める他に、方法はありません」
「そうでもしないと、この状況は変わらないか……」
「……待てよ」
野坂の作戦に賛同が集まり始めたとき、Aの低い声にその場がしんとした。
Aは俯いたまま、呟くように声を絞り出す。
「……本当に、それ以外にやり方ねえか？ ……あいつらは……本当は……」
「……Aさん、彼らと何かあるのかい？」
「……まさか」
野坂の問いに、風丸がハッとしてAを見た。
俯いていた目を上げ、風丸に頷く。酷く苦しそうな表情だった。
「イタリアにメイビスが……あたしの家族がいる」
「「！」」
「なあ……何とかならねえか！？ あいつらにこれ以上、苦しい思いはさせらんねえよ！」
泣き出しそうな顔で野坂のユニフォームを掴み、縋った。彼の黒い瞳が揺らぐ。
「頼む、あたしの家族なんだ！ ママン・レーヌに……イリーナに操られてるだけで、それしか生きる道がないだけで！ 本当はあたしらと同じ、ただのサッカーが好きな少年なんだ！！」
「……そうだよ」
Aが振り返る。雨にしとしとと濡れるフィールドをバックに、稲森が立っていた。
芯の通った声で前に出る。
「俺も反対だ。忘れたのかみんな！？ 俺たちは、正面から戦うって決めただろ。敵がどんなに卑怯な手を使ってきてても、選手が危険になるやり方はダメだ！」
「稲森……」
「ましてや、Aの家族が向こうにいるなら……俺は、そいつらも助けたい！ それはみんなも同じだろ！？」
稲森のその言葉に、Aは周りを見回した。幾人かが黙って俯いている。それは、稲森の言葉の肯定に等しかった。
胸がじんと熱くなる。
「俺たちが勝ち進んでこられたのは、俺たちのサッカーをしたからだろ。今オリオンと同じ手を使ったら、それは、今までの俺たちの全てを否定することになるんだ！！」
黒雲から雷が鳴り響き、稲森の背中を白く照らす。
彼の言葉は正に、この立ち込める黒いモヤを切り裂き吹き飛ばす、稲妻だった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 52人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「イナズマイレブン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
杳覇(プロフ) - 初見朧さん» ああああ初見朧ーー！！ ありがとう！！ ああー嬉しいです(T ^ T) トロイメライ発動シーンは私も特にお気に入り箇所なので……！！ 更新頑張ります！ ありがとう！！ (2021年7月9日 20時) (
レス) id: 1cd5a8a31d (このIDを非表示/違反報告)
初見朧(プロフ) - 遅くなってごめん！続編おめでとう！蓮水ちゃんが初めてトロイメライをやった時最高潮に心が盛り上がってました！更新楽しみにしてます！頑張ってね！ (2021年7月9日 20時) (レス) id: 2aa92eadb7 (このIDを非表示/違反報告)
杳覇(プロフ) - 白目黒口さん» しろくろありがとうーー！！ 一応ちゃんと考えてあります……！！ というかまたシュートのとこからの引用になっちゃうんだけど(汗) ありがとねー！ 更新頑張ります！！ (2021年7月4日 18時) (レス) id: 1cd5a8a31d (このIDを非表示/違反報告)
白目黒口(プロフ) - 続編おめでとうー！(本当にあるのかは置いておいて)トロイメライ の仕組みがどうなってるのか不思議っす……！更新頑張ってください！！！！！ (2021年7月4日 17時) (レス) id: c29c1a0e83 (このIDを非表示/違反報告)
杳覇(プロフ) - 蒼乃さん» はっっっや！！？ 蒼乃ありがとう……！！ トロイメライ、れん作者共々めちゃめちゃ頑張ってたので盛り上がって貰えて嬉しいです！！ そこね、とにかくれんの成長が書きたかったんだ……！ 伝わってて良かった……！！ 更新頑張りますっ！！ (2021年7月4日 17時) (レス) id: 1cd5a8a31d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：杳覇 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Detectivec4/
作成日時：2021年7月4日 17時
