恋じゃ君を掴めない。 Ⅱ (ページ26)

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『作間くんとこでしょ？』

「っ…」

『なんでそこまでするの。

ただの幼馴染なんでしょ？』

「お願い、離して…」

申し訳ないけどまた埋め合わせしよう、と

彼のほうに向きなおすと

手首が掴まれて動けない。

優斗の声がとてつもなく冷たくて

掴まれた手も痛い。

『…も、疲れちゃった』

「え、？」

『……………別れよっか』

震える声で言う彼の違和感に

気付いて顔を上げるのに

うつむいているから表情が見えない。

別れたくないって思ってるはずなのに

声が出ない。

「ゆ、うと」

『…今日、何の日かわかる？』

「え、？」

『っ…ごめ、なんでもない。

早く作間くんとこ行きなよ』

脱力しながら私に背を向ける彼を

今度は私が引き止めたけど

こっちを一度も見ないままに

掴んだ手は彼の反対の手で降ろされてしまった。

そのまま、優斗は歩き出す。

「ちょっと待って、優斗！」

『無理だったよ、作間くんには勝てない』

「勝てないって…」

『Aちゃんは、気付いてないんだよ。

…ほら、はやく行って』

「優斗！」

『お願いだからもう名前呼ぶなって！！』

初めて聞いた優斗の大きな声に

思わず肩がびくついてしまう。

ぐっと唇を噛むのが見える。

あぁ今、私すっごく優斗のこと傷つけてるんだ。

なのに彼の手を一番に取れないんだ。

『Aちゃんの一番は、俺じゃないじゃん』

「っ、」

『俺はどう頑張ったって

……っ、一番にはなれないじゃん』

「ごめ、んなさい」

それに対する優斗の言葉は聞こえなかった。

駅の中を走って、電車に飛び乗る。

行先はもう決まっていた。

だって今日は

…今日は、さくちゃんの両親の命日だから。

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