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丹色に溶け始めた空 ページ7

夕焼けに空が溶け始め、ルーカスが僕を迎えに図書館までやって来た。

「アラン、そろそろカリタへ帰ろう」

「ありがとう、今日は本当に助かったよ」

「……いえ、また来ますね。ありがとうございました」

館長から温かな感謝の言葉を口にされ、僕は僅かな違和感を覚えた。何かやったことに対する感謝を言われることが、久し振りだったからかもしれない。



丹色に染まる街の石畳を歩き、カリタのある丘を目指す。ルーカスは合流したカリタの他の子と話し始めた。

「そうだ。アラン、パトリシアを見なかったか? 図書館近くの花屋が奉仕先だって聞いたが」

「……どうだろう。僕はずっと館内にいたし、気付かなかったよ」

ほんの少しだけ、逡巡した。本当のことを言うべきか、そうでないか。

けれど僕は、パトリシアのやっていたことに目を瞑ることにした。それに理由は存在しないけれど。


「ところで、エリシュカはどこが奉仕先なの?」

「エリシュカ? エリシュカは奉仕活動が無いが」

僕はパトリシアの話題でボロを出さないようにしなくてはいけない。けれどきっと無理がくるだろうから、多少強引であろうと別の話題にすることにした。

するとルーカスはその話題に上手いこと食いつき、パトリシアの話題はすっかり逸れる。


「やっぱり、あの翼が原因なの?」

「“翼”というより……その“翼”が生えちまう“病”が原因なんだよ。だからエリシュカは普通の人間生活は送れやしない」

「そう……」

苦々しげに言うルーカスに、僕はそれ以上言うのをやめた。


「流石、よく解ってるね。エリシュカがこの先、あたし達みたいな暮らしを送れることなんて、もうないの」

突如僕たちの間に走った声。それは、ルーカスが捜していた彼女のそれだった。

「パトリシアか。お前、一体どこに行っていたんだ。それにその籠は?」

パトリシアの持つ籠を指差すと、彼女は何てことはないように肩を竦める。

「別に。奉仕先の人から貰ったの。アランなら知ってんじゃない?」

流し目でこちらを見たパトリシア。急に水を向けられた僕は、慌てて首のみを縦に振る。咄嗟の行為で、否定をすることが出来なかった。

「……そうか、なら良い。後でマザー・ヴィエルジュにお渡ししとけよ」

「気が向いたら、ね」

気紛れな返答をしたパトリシアが僕の元へと走り寄る。

「“カリタの天使”について知りたいのなら、ルーカスに内緒で教えてあげる」

片目を瞑る彼女の肌を、夕焼けが丹色に染めていた。

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設定タグ:小説 , 奇病 , 更新不定期   
作品ジャンル:純文学, オリジナル作品
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夏向@テスト期間は低浮上(プロフ) - 初めまして。書き方講座から飛んできました。書き方講座で批判する方が多いと仰っていましたが私は正論だと思います。すごく勉強になりましたし、この作品を読んでさらに「ああ、なるほどな」と思いました。書き方講座の感想が中心で申し訳ありません。応援してます! (2017年7月25日 9時) (レス) id: 2e5a8262c2 (このIDを非表示/違反報告)
魅華(プロフ) - あまりオリジナル作品は読まないのですが、作品の題名に魅了されて読んでみました。お話の設定が作り込まれていたり、表現も良く。その場面がすぐにでも頭に思い浮かぶようで…読んでいて楽しかったです。更新は不定期のようですが、私はいつまでも待ってます。 (2017年4月29日 7時) (レス) id: e130183931 (このIDを非表示/違反報告)
柚葉(プロフ) - #からし#さん» 講座であることは、私が実際に用いているものでもありますので。理解が深まる手助けになっているのであれば幸いです。更新、停滞気味になるかと思いますが気長に待って頂ければ嬉しい限りです。 (2017年3月29日 20時) (レス) id: 0cb3850309 (このIDを非表示/違反報告)
柚葉(プロフ) - 蓮華さん» 作品に気品ですか…そう言って頂くのは初めてです。蓮華さんの御期待に添えるよう、努力を惜しまずに頑張っていこうと思います。どうかこれからもよろしくお願いします。 (2017年3月29日 20時) (レス) id: 0cb3850309 (このIDを非表示/違反報告)
#からし#(プロフ) - 私も書き方講座から来ました。実際に講座に書いてあったことが反映されていて、理解が深まりました。更新、楽しみにしてます! (2017年3月28日 22時) (レス) id: 0fe00a1f20 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:柚葉 | 作成日時:2017年3月26日 13時

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