楽園の子どもたち ページ3
ミサを終えてテラスで庭を見ていると、誰かの声が僕を呼んだ。
「アラン」
視線を滑らせると、庭の木陰に僕と同年代くらいに見える少年が佇んでいる。
「君は……?」
「俺はルーカス・ブレッサンだ。お前と同室になるから。これからよろしく」
「こちらこそ。よろしくね、ルーカス」
近づいてきたルーカス右手を掴み、握手をする。ルーカスの手は、彼の
彼は断りを入れて隣の椅子に腰掛ける。
「ところで、アランはいくつなんだ?」
「17歳だよ」
「へえ、もう17か。俺より2つも歳上だ」
ルーカスが思っていたよりも幼いことに少し驚いたが、よく見ると彼の瞳はまだあどけなさを残している。
「なら、カリタの最年長者はエリシュカからアランに交代だな」
「エリシュカ?」
聞き覚えのない名前。カリタにいる少女だろうか。
僕の疑問を含ませた言葉に、ルーカスは合点がいったように眉を上下させた。
「そうか、ミサにもいなかったしな……パトリシア!」
ルーカスが声をかけた先には
「ルーカス! どうしたの?」
「エリシュカはどうした? シスター・サヴィーネから何か聞いてないか?」
「何にも。でも今朝、発作が起きたみたい」
「また発作か? 最近多いな……」
僕を置いて進められる会話は一旦切られ、少女が僕に向き直った。
「初めましてアラン・ソリテュード。あたしはパトリシア・マリエル、15歳。よろしくね」
「ああ、よろしく。ところで、エリシュカって誰?」
僕の疑問にパトリシアは目を瞬かせ、そして笑った。
「あはは、アランは知らないもんね。
――エリシュカは、カリタの天使なんだよ」
何てことのないように吐き出されたその言葉に、僕は思わず固まる。
「おい、やめとけ」
ルーカスの
「違うの? エリシュカは博愛主義者で明朗で、
「パトリシア!!」
遂に怒って言葉を遮ったルーカスは、彼女の腕を掴んで席を立つ。
「ちょ、やめてよルーカス!」
「やめるのはお前だ! 悪いアラン、後で会おう」
パトリシアを引き摺るようにテラスを去るルーカスを呆然と見送る。
テラスには、僕の疑問で飽和した空気が流れていた。
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夏向@テスト期間は低浮上(プロフ) - 初めまして。書き方講座から飛んできました。書き方講座で批判する方が多いと仰っていましたが私は正論だと思います。すごく勉強になりましたし、この作品を読んでさらに「ああ、なるほどな」と思いました。書き方講座の感想が中心で申し訳ありません。応援してます! (2017年7月25日 9時) (レス) id: 2e5a8262c2 (このIDを非表示/違反報告)
魅華(プロフ) - あまりオリジナル作品は読まないのですが、作品の題名に魅了されて読んでみました。お話の設定が作り込まれていたり、表現も良く。その場面がすぐにでも頭に思い浮かぶようで…読んでいて楽しかったです。更新は不定期のようですが、私はいつまでも待ってます。 (2017年4月29日 7時) (レス) id: e130183931 (このIDを非表示/違反報告)
柚葉(プロフ) - #からし#さん» 講座であることは、私が実際に用いているものでもありますので。理解が深まる手助けになっているのであれば幸いです。更新、停滞気味になるかと思いますが気長に待って頂ければ嬉しい限りです。 (2017年3月29日 20時) (レス) id: 0cb3850309 (このIDを非表示/違反報告)
柚葉(プロフ) - 蓮華さん» 作品に気品ですか…そう言って頂くのは初めてです。蓮華さんの御期待に添えるよう、努力を惜しまずに頑張っていこうと思います。どうかこれからもよろしくお願いします。 (2017年3月29日 20時) (レス) id: 0cb3850309 (このIDを非表示/違反報告)
#からし#(プロフ) - 私も書き方講座から来ました。実際に講座に書いてあったことが反映されていて、理解が深まりました。更新、楽しみにしてます! (2017年3月28日 22時) (レス) id: 0fe00a1f20 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:柚葉 | 作成日時:2017年3月26日 13時