飼い主探してます。【キ ヨ】

▽ ページ19

パシィン・・・



時が止まったかのような感覚に陥った

何かと何かが勢いよく叩きつけられた音が俺の頭の中で何度も何度も鳴り響く


比例して聞こえてきたのは、男の怒号とAの泣き声


父｢お前はこの数日間何してたんだよ！！約立たず！！

お前はひたすら客集めてパン売っときゃいいのによ、ローン返せなかったらどうすんだ！？ああ！？

それなのにこの男と何があったんだよ！！身体でも売れたか！1円でも稼げたかよ！！おい！なんか言えよ！｣



『うぅ・・・えーん・・・ごめっ、ごめんなさい・・・っ』



何が起きてるのか分からなくて身体が固まる

父親の隣に経つ女は何事も無いように2人の姿を見つめていた



キヨ｢な、なにしてるんですか・・・？｣



一生懸命考えて、口から発した俺の一言目はそれだった

見れば分かるのに。

大事な、家族の・・・Aが酷い目にあってるのに。



『キ、ヨ・・・き、よかえ、っては、やく』


Aの弱々しい言葉で我に返った
俺は1歩踏み出し、父親のAを叩く手を止めた


キヨ｢何してんだって聞いてんだよ！！！｣


父｢てめぇはなんなんだ！うるせえな！！｣


無惨にもその手は振り切られ、俺の頬を掠める

寒さと掠った爪後が嫌にも効いて来て、ジンジンと痛みを増していく


母｢あなたちょっと何してんのよ・・・！
この子に手を出すのはダメでしょう・・・！｣


キヨ｢俺なんかより・・・Aに手出す方が筋違いなんじゃないすか、おばさん｣


俺はぐったりとしたAを抱き寄せ、喚くババァに向かってそう言ってやった


母｢なっ！？｣


キヨ｢いいっすか、とりあえず今すぐ通報されたくなかったらAを預からせてください｣


父｢いいよ、そんなガキくれてやるよ

いや、大事な労力の1人だからよ。
明日の朝にはここおいといてくれ｣


意味が、分からない


キヨ｢・・・そんなことしません｣


父｢はぁ・・・誘拐少年として院にいれられたくなきゃ返せよな。じゃあまたなー｣


キヨ｢そしたら捕まるのはあんた達の方だぞ・・・！！！｣


怖くて震えるのを我慢してそう叫ぶと
男は俺に背を向け、女はその男と腕を組んだ


キヨ｢おい・・・！いいのかよ！！｣


もしかしたら｢ごめん、大切に育てる｣とか｢俺らは捕まってもいい｣とか今更な事言うんじゃないか、って期待をしていた


が


そんなことは有り得なくて、男は札束をひらひらと見せびらかし俺たちの前から姿を消した

きっと、酒やホテル代に使うんだ

俺は倒れたAをおぶって家へ帰った

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