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特にこれといって理由はない。
急に降り始めた雨を見て、思い浮かんだのはAの姿。
雨が好きなアイツに会いたくなった。
急に会いたくなったから、なんて 俺は俺が思っているよりずっと女々しいらしい。
ただでさえ落ち着きのない髪が、雨の日はさらに暴走するというのに
俺は雨の中、出掛けることにした。
けど、結果的に会いに行った、というよりも
たまたま出くわした、という方が正しいかもしれない。
男二人に絡まれていたAはどうやら家に帰れないらしい。
俺に迷惑をかけたくないのか、安いホテルを聞いてきた。
もちろんそんなことはさせられない。
ひとまず、これ以上濡れないよう傘をAに傾ける。
雨で濡れた長い睫毛を、ふるりと震わせて
Aが俺を見上げた。
雨で濡れているAが、どこか寂しそうに見えた。
いつもの凛々しいAがとても弱々しく見えて。
「(…庇護欲、だな…)」
雨の中、不良が捨て猫を拾う理由が、今なら分かる気がする。
どうしようもなく守ってやりたくなるのだ。
他の誰でもない自分が、守ってやるのだと。
なのに
ど う し て こ う な っ た
『…ありがとう、じゃあ、お言葉に甘えて…』
「お、おう」
ぱたん、と閉じられた風呂場の戸。
少ししてから濡れた服をするすると脱ぐ音がして
また少しすると、シャワーの水の音が聞こえてきた。
やばい。
何がやばいって、この状況がやばい。
風呂場に、Aがいるのだ。あのAが、風呂場に…
入浴中だからもちろんAは今、なにも着ていない訳で。
どうしようすごい興奮する
いやいや俺は童貞か!いやでもこれは男なら誰だって興奮するだろ!
好きな女が自分の家で入浴中だぞ!?
どくんどくん、と俺の心臓が暴れている。
守りたいと感じた俺の庇護欲はどっかに落としてきたらしい。
風呂上がりのAなんて見たら襲っちまうだろうが…!
俺は馬鹿か!よく考えれば分かることじゃねェかよ…!
ずぶ濡れの無防備なAを万事屋に連れ込んだ挙げ句、
風邪引いちまうからと言葉巧みに丸め込み、風呂に入らせている。
もう俺には風呂上がりのAとベット(布団)へゴールインして
朝までラブラブ幸せコースしか浮かんでこない。
そんなのAに絡んだ男連中と一緒だとは頭ではわかっているのだが…
どうするんだよ、俺…
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よる - お話の流れがめちゃくちゃ綺麗でスラスラよめちゃいました!面白かったです!続き楽しみにしてます! (2022年8月26日 21時) (レス) @page21 id: 51420f01b3 (このIDを非表示/違反報告)
紗夜(プロフ) - 続きを…続きをください!_○/|_ (2022年4月14日 3時) (レス) @page21 id: 5c2d649dea (このIDを非表示/違反報告)
ぼんど(プロフ) - めちゃんこ面白いです!!これから銀ちゃんや土方さんとどんな関係になるのか気になります!更新待ってます! (2022年2月7日 21時) (レス) @page21 id: 35902c24cd (このIDを非表示/違反報告)
キーさん(プロフ) - 更新!!待ってましたー!!ありがとうございます今回も良かったです!作者様のペースで頑張ってください! (2021年4月7日 23時) (レス) id: 1d2c287881 (このIDを非表示/違反報告)
紅 - 続きが気になります!更新お待ちしております (2021年4月1日 23時) (レス) id: 5f29fe8655 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:A | 作成日時:2019年4月14日 22時