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傘が雨粒をはねる音がする。
500円の傘の中は流石に二人では狭いだろう。



「…だいぶ濡れてんな。冷えきってんじゃねェか。
取り敢えずお前の家までこの優しい銀さんが送ってやるからその後、説教ね」


『…悪いけど、ちょっと訳ありで…今家には戻れないの。
銀時はこの辺り詳しいの?…安いホテル、教えてほしい。』



そう伝えれば銀時はピクリと眉をひそめた。
ゆっくりと彼の赤い瞳が私を映す。あれ、この感じなんだか懐かしい。

ちょっと、怒ってる…?




「訳あり、ねぇ…」




すぅ、と目が細められる。どうしたものかとその目をただ見つめ返していたら
私の頭に銀時の手が降りてきた。



「お前さ、前に俺に何て言ったか覚えてるか」


『……?…』




銀時の手は濡れた私の髪をするすると撫でている
額に張り付いた前髪をそっと横に流し、乱れた髪を耳にかけた

やさしい手だった



「お前が覚えてなくても、俺はちゃんと覚えてる。
“考え込むのはいいけど抱え込みすぎるのは駄目だ”、って言ったんだよ」



そういえば、そんなことを言ったような言わなかったような
けれど、銀時に言ったその言葉が何だと言うのか



「それ、そっくりそのままお前に返す。何隠してんだか知らねェがお前も程々にな。

…つか、さっきの野郎にも安いホテル聞いたのか?んな事したら絡まれるに決まってんだろうが!」



『…ご、ごめん…』



つい謝ってしまった。
自分から話しかけた結果、あの状況になってしまったわけだから
原因は私にある、のかもしれない。

抱え込むな、という言葉
私はそこまで抱え込んでるのだろうか
自分のことだというのにどうにも理解していない私がいる。

やめよう。きっとまだ私は混乱しているのかもしれない



「あ〜いや、今はそれどころじゃねぇか。家に帰れないんなら着いてくる?」


『…どこか行くの?』



「折角だし、お前には知っておいてほしくてな」



『………』


「…急ぐぞ、医者のお前が風邪引いちゃ示しがつかねェだろ」



私の髪を梳かした銀時の手がまた私の頭をぽんぽんと撫ででくれる。
どうにも私を子供扱いしているように思う。

私ももう頭を撫でられるような年ではないためか、気恥ずかしさを感じてしまう。
やめてほしいと、正直に言えばいいのだけれど



存外、銀時に撫でられるのは悪い気分でもないから
時折どう反応すれば良いのか困る




今も昔も、彼の手はこんなにも優しい




―――――

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よる - お話の流れがめちゃくちゃ綺麗でスラスラよめちゃいました!面白かったです!続き楽しみにしてます! (2022年8月26日 21時) (レス) @page21 id: 51420f01b3 (このIDを非表示/違反報告)
紗夜(プロフ) - 続きを…続きをください!_○/|_ (2022年4月14日 3時) (レス) @page21 id: 5c2d649dea (このIDを非表示/違反報告)
ぼんど(プロフ) - めちゃんこ面白いです!!これから銀ちゃんや土方さんとどんな関係になるのか気になります!更新待ってます! (2022年2月7日 21時) (レス) @page21 id: 35902c24cd (このIDを非表示/違反報告)
キーさん(プロフ) - 更新!!待ってましたー!!ありがとうございます今回も良かったです!作者様のペースで頑張ってください! (2021年4月7日 23時) (レス) id: 1d2c287881 (このIDを非表示/違反報告)
- 続きが気になります!更新お待ちしております (2021年4月1日 23時) (レス) id: 5f29fe8655 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:A | 作成日時:2019年4月14日 22時

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