春待ち #影山 ページ12
『勉強、教えてくださいコラ』
普段、私よりも高い位置にある丸い頭。それが私の目線よりもずっと下にある事に驚いて、瞬きを数回。
丸い頭の彼――影山飛雄の手には、くしゃりと皺の寄った用紙が一枚。察するに今日の小テストだろう。20点満点のはずのそのテスト、それにはデカデカと『4』の文字が記されている。
「……日本史、13点以下は再テストだったよね」
「昼休みにな」
「それも落ちたら受かるまで放課後残らされるんだっけ」
「部活はぜってえに休みたくねえ。から、頼む」
「あ、休む前提になっちゃうわけね……」
まあ確かに、影山の脳みそは興味のないことはとことん吸収しないらしいので、何度も落ちるだろうことは目に見えている。
少しだけ悩む素振りをみせてから、「いいよ」と答えれば彼の表情が明るくなった。「アザス、ねあいしァス！！」と馬鹿でかい声で叫んだので、机に太腿をぶつけて悶え苦しんだ。
︙
「おい、慶喜は誰だ」
「徳川家で一番最後の将軍だよ。大政奉還を行った人ね」
「タイセイホウカン？？」
「幕府が朝廷に統治権を返したってこと。因みに慶喜さん、一般人になった後は親しみを込めて「
「わかんねえ……」
記憶に残りやすいよう先生から聞いた話も挟んでみたが、逆効果らしかった。それよりもこんな簡単な所で躓いているとは思わなかった。随分初歩的というか、これは小学生でも答えられる問題なんじゃ……安政の大獄とか尊皇攘夷とか言っても分からなさそうだ。さて、どう教えたらいいんだろうか。
「なんていうか、説明して駄目なら書いて覚えろとしか言えないわもう」
「クッソ……！」
「勉強はダメ山くんですね〜」
「あ゛！？」
「ハイハイ、手を動かそうね」
トントンと教科書を指で叩けば、言葉に詰まったらしい影山は渋々単語をノートに書き連ねた。無駄話も多いけれど、時々私がランダムに問題を出したりして、なんとか単語を頭に詰め込むことに成功した。
「てか、影山覚えるの早いよね。勉強しないだけで」
「バレーボールでハンドサインとか使うからな」
「今後はそういう長所も勉強に活かしてクダサイ」
「うぐっ……！」
何も言い返せない、とでも言いたげな表情の影山に、「受かったらジュース奢ってね」とウインクをしておいた。
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志織(プロフ) - mokyunさん» コメントありがとうございます！松川くんのこのお話はいつか書きたいなーと思っていたのですが、せっかくなので短編集に載せました。お気に召して頂けたようで良かったです！他のキャラも色々書こうと思っていますので、ぜひ楽しんでいってください！ (2018年1月22日 21時) (
レス) id: f90efcc153 (このIDを非表示/違反報告)
mokyun(プロフ) - どのお話もステキですが、特に大人のまっつん。いいですね… 外堀から埋めていって、逃げられないね？どうする？っみたいな!? 他にどんな男子がでてくるのか楽しみです! (2018年1月22日 2時) (レス) id: e5a3b0aa31 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：志織
| 作成日時：2018年1月14日 2時
