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『ざッッけんな』


盛大に歪められた顔に、胸の奥の血管が無遠慮に千切り取られるような痛みを覚えた。
おかしい。こんなはずじゃなかった。何度も何度も頭の中でシュミレーションをしたはずだ。


いつだって追いかけてもらえない。俺が近づかなければ離れていく不確かな関係で、どんな時でもそれに心を痛めてきたのは俺ばかり。世に広く知れ渡る様な形の幼馴染になんてなれなかった。理不尽だ。何がいけなかったのだろう。


『別に私はアイツと仲良くないから』


今でもたまに夢を見る。あれはたぶん、小学生の頃だ。幼さも相まってひどく傷ついたのを覚えている。たとえ関わりがなくなっていたとしても、俺はAの特別であれるのだと。自惚れていた。自尊心と純粋な想いを傷つけられたような気がして、ぐっと唇を噛む。やがて鉄の味がして、その頃には少し冷静になれていた。


別に、俺が大切に思っているからその分俺を大切にしてくれと言いたいわけじゃない。ただ、少しでもいいから振り向いて欲しかっただけ。俺のことをもっと考えてくれたらと、そう願っただけだ。それは許されないことだろうか。


まあ、結果的に口も利いてもらえなくなったわけだけど。


家が隣、だなんて奇跡的なこともあって、通学路は一緒だ。普段は時間も合わないので別々だけれど、その日は違ったのだ。部活も休み、前方には幼馴染。咄嗟に声をかけた。
一世一代の告白だった。「俺と付き合ってくんない」。上から目線だし、脈絡もなかったと思う。それでも、俺は本気だった。


――どうして、「なんとなく」だなんて。くだらない、嘘をついてしまったのだろう。今も昔も俺はAのあの追及するような目が苦手だ。それで焦って、あんな。でも、好きなんだ。


むかつくくらい順応性が高いアイツのことだから、きっと今よりももっと冷え切った仲になったとしても、受け入れてしまうんだろう。俺を置き去りにして。
 
 
 

*→←ティーンエージャー #川西



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志織(プロフ) - mokyunさん» コメントありがとうございます!松川くんのこのお話はいつか書きたいなーと思っていたのですが、せっかくなので短編集に載せました。お気に召して頂けたようで良かったです!他のキャラも色々書こうと思っていますので、ぜひ楽しんでいってください! (2018年1月22日 21時) (レス) id: f90efcc153 (このIDを非表示/違反報告)
mokyun(プロフ) - どのお話もステキですが、特に大人のまっつん。いいですね… 外堀から埋めていって、逃げられないね?どうする?っみたいな!? 他にどんな男子がでてくるのか楽しみです! (2018年1月22日 2時) (レス) id: e5a3b0aa31 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:志織 | 作成日時:2018年1月14日 2時

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