＊第二幕はすぐそこに ページ15
夏も佳境に入る頃、本番前のリハーサルに追われる私達は、どことなくそわそわとした雰囲気に包まれていた。本番への緊張ではない。なぜなら、自分達が出来る限りの手を尽くして作り上げたそれは、あとは練習と同じように演じ、練習以上に役になりきればいいだけだから。
「ねえ、東都生には被害なかったんだよね？」
「うん。俺は特別関わりがあったわけじゃないんだけど、東都絡みっていうよりは個人的な怨恨みたいだって警察の人が話してたから。とは言っても、その恨みの矛先が勤め先の大学自体に向くかもしれないからって注意喚起はされてるんだけど」
「杉原くん、気をつけてね」
「ありがとう三浦くん」
――東都の、理工学部の陣野准教授が何者かに刺殺される事件が起こった。事件の概要など知らないし、前述の情報しか公表されていないのだが、東都とのインカレであるウチのサークル内は他人事とは思えない事態に震え上がった。それはそうだ。殺人事件がこんなにも近いところで起こるなんて、そうそうあることじゃない。コナンくんの周りを除いて、だけど。
そう考えると、事件が日常のようになってきている私の感覚は相当おかしいと思う。
(まあ、どうしようもないんだけどさ)
出来る限りで動けばいい。今、私に必要なのは家族の安全を確保することと、自分を守ること。それ以外はスペシャリスト達にまかせてしまえばいいのだ。高校生探偵の彼は確かに事件を呼び寄せる体質だけれど、迷宮なしの名探偵なのだから。
︙
工藤先生が書き上げたオリジナルのシャーロック・ホームズは、今までとは少々毛色の違うミステリーだった。もう一度、ホームズとして生まれ変わり二度目の人生を生きるホームズと、同じ境遇であるモリアーティの物語だ。しかし彼らは決して相容れることなく、やはり対立する。大学生らしく自由な作風は、私達の演劇魂に火をつけたのである！！
「私は知っている。彼と私の長きに渡る戦いを、終わらせる場所を。さあゆこう。全てを無に帰す舞台――」
「今度こそ、憎き探偵の死に顔を拝んでやるのだ。馬車を出せ――」
「「ライヘンバッハの滝へ」」
音楽が一層大きくなり、静止した人物達を覆い隠すように幕が降りる。
え、事件は？ 起きなかったんだけど？？
こういうイベントがある場合、コナンくんがいると絶対に何かしら起こるはずなのだ。彼が来ていることは確認済み……
これってもしや、
(嵐の前の、静けさ……？)
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織叶(プロフ) - ナチュラルな感じのナルシストっぽさがすごく好きです…！更新が楽しみです！！ (2021年1月27日 19時) (
レス) id: bc2d105faa (このIDを非表示/違反報告)
志織(プロフ) - みさん» コメントありがとうございます！正直、自分では全く書いたことのないタイプのキャラクターなので、お気に召して頂けたのならとても嬉しいです！ (2020年4月1日 21時) (レス) id: de7effe731 (このIDを非表示/違反報告)
み - 褒められて照れる主人公がすごく可愛いです！！めちゃくちゃ面白いです！！！ (2020年3月30日 17時) (レス) id: 2992cbf307 (このIDを非表示/違反報告)
志織(プロフ) - さちさん» コメントありがとうございます！面白いと言っていただけて嬉しいです。予定も立て込んでいますので出来る範囲での更新となりますが、お付き合いいただけたら幸いです……！ (2019年8月7日 16時) (レス) id: f90efcc153 (このIDを非表示/違反報告)
さち - すごくおもしろいです。続きが早く読みたいです。よろしくお願いします。 (2019年8月6日 13時) (レス) id: 02606fd336 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：志織
| 作成日時：2019年6月17日 12時
