*徹底的に洗い出せ ページ12
「……なるほど、そんなことがあったわけね」
灰原は深刻な表情を浮かべながら、博士の淹れた紅茶を啜った。その手が小刻みに震えていることは、敢えて指摘しなかった。
「ああ。ニコラシカっつー構成員と何かしらの繋がりがあるのは確かだ。問題は、組織の存在を認知しているかどうかってとこだな。ただ、ベルモットのコードネームを知ってるのを鑑みると、限りなく黒に近い」
「そうね……ベルモットが彼女をひと目で女性と判断したことも、疑う要素としては充分じゃない? 彼女、初見じゃ男と見間違えるくらい中性的なんでしょ?」
そうだ。その通り、ベルモットはあの時三浦さんを「プリンセス」と、そう呼んだのだ。三浦さんのことを女性だと初見で見抜くのは結構難しい。つまり、ベルモットと三浦さんは面識があるか、あるいはニコラシカを通して間接的に知り合いであり、結論として彼女は組織に通じている可能性が非常に高い。
――確かに、そうなんだけど……
「……怖いって、言ってたんだよなー……」
「なに?」
「人が死ぬことに慣れることが怖いんだって、あの人言ってたんだ。いずれは自分も被害者になるのかもって。――それは、本心に見えた」
この数週間、三浦さんが人質にされる前までだけど、俺はそれなりに彼女に好印象を持っていた。確かにナルシストだが、自分のことも他人のことも大切にする温厚な性格は、きっと知ってしまえば誰だって嫌いにはなれないだろう。それが「もしかしたら全部演技なのかもしれない」なんて、残念な気持ちになっても仕方がないと思う。
けれど、もし組織の連中だとしたら。俺の周りにいる人間を傷つけたり、他人を簡単に殺めるようであれば。容赦はしない。
だったらまずは、彼女の情報を掻き集めるしかないだろう。それは俺だけの力では無理だ。なぜなら、今の俺は工藤新一ではなく“小学生の江戸川コナン”なのだから。
「ちょっと電話してくっから」
「イチゴを出すから、終わったら新一も食べるんじゃぞ」
「サンキュー博士」
「博士は3個までよ」
「て、手厳しいのぅ……」
博士の悲痛な溜息に苦笑しつつ、二人から少し離れたところで電話をかける。調べてもらうなら、あの人が適任だ。
通話が開始される。言いたいことを手短に、要点だけまとめよう。
「あ、もしもし? ちょっと調べてほしいことがあって――」
1032人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
織叶(プロフ) - ナチュラルな感じのナルシストっぽさがすごく好きです…!更新が楽しみです!! (2021年1月27日 19時) (レス) id: bc2d105faa (このIDを非表示/違反報告)
志織(プロフ) - みさん» コメントありがとうございます!正直、自分では全く書いたことのないタイプのキャラクターなので、お気に召して頂けたのならとても嬉しいです! (2020年4月1日 21時) (レス) id: de7effe731 (このIDを非表示/違反報告)
み - 褒められて照れる主人公がすごく可愛いです!!めちゃくちゃ面白いです!!! (2020年3月30日 17時) (レス) id: 2992cbf307 (このIDを非表示/違反報告)
志織(プロフ) - さちさん» コメントありがとうございます!面白いと言っていただけて嬉しいです。予定も立て込んでいますので出来る範囲での更新となりますが、お付き合いいただけたら幸いです……! (2019年8月7日 16時) (レス) id: f90efcc153 (このIDを非表示/違反報告)
さち - すごくおもしろいです。続きが早く読みたいです。よろしくお願いします。 (2019年8月6日 13時) (レス) id: 02606fd336 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:志織 | 作成日時:2019年6月17日 12時