*ニコラシカ ページ6
少し頑張れば、乗り移れそうな距離。
しかし私の運動神経はお世辞にも良いとは言えない。運痴というわけではないけども……
私が躊躇う間にも、スピードは上がっていく。そろそろ事故が起きてもおかしくないだろう。ヘルメット越しに、その女性と目が合った。
「さあ、どうするの? 選ぶのはアナタよ」
その言葉に、意を決して車からバイクへと飛び移る。バイクは少し揺れたものの、私は上手く座席に腰を落ち着けたし、後は女性が上手くバランスをとってくれたので事なきを得た。
「流石、ニコラシカの宝物ね」
「に、にこ……?」
言葉の意味が解らず訊ねようとした時、前方で大きな音がした。さっきまで乗っていた車が、急カーブでガードレールを突き破って反対車線の防音壁に突っ込んで大破したのだ。あのままあの車に乗っていたら、私は確実に死んでいただろう。
今になって、どっと冷や汗が出てきた。
「……――さぁん……三浦さ……三浦さあぁあああん!!!」
今度はなんだ!! と後ろを振り返ると、車を縫って物凄いスピードでこちらへとやって来るコナンくんが、必死な形相で私の名前を叫んでいた。
「コッコココナンくん何してんの!!!?」
「三浦さあああん!!」
「三浦でーーーーーす!!!!?」
そのやり取りにくすりと笑みをこぼした女性は、バイクのスピードを落としながら道の脇に車体を寄せる。
そこで私を降ろすと、彼女はちょうど到着したコナンくんに完璧なウインクをかました。
「それじゃあシルバーブレッド、ニコラシカのプリンセスは頼んだわ」
「っおい、待て!!!」
「goodbye」
流暢な“またね”を残して、彼女は行ってしまった。
「クソッ……三浦さん、大丈夫? 怪我ない? 警察もあと少しすれば来ると思うから、ここで待ってようね」
「へ……あ、うん」
呆然としていた私は、お礼を言い忘れたことも気づかずに見覚えのある女性について考える。
見覚えがあるってことは、十中八九登場人物と見て間違いないだろう。けれど主要メンバーではないはずだ、常に出ていた人くらいなら私にもわかる。……そういえば、やけに英語を使う人が何人かいた気がする。たしかFBIの捜査官と、後は組織の――
「……あ、思い出した。ベルモットだ」
お酒の名前の、あの組織の。
何も考えずにさらりと口走った私は、呆然自失になっていたために気づかなかった。
コナンくんが、驚愕の表情で私を見ていただなんて。
――詰みである。
1032人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
織叶(プロフ) - ナチュラルな感じのナルシストっぽさがすごく好きです…!更新が楽しみです!! (2021年1月27日 19時) (レス) id: bc2d105faa (このIDを非表示/違反報告)
志織(プロフ) - みさん» コメントありがとうございます!正直、自分では全く書いたことのないタイプのキャラクターなので、お気に召して頂けたのならとても嬉しいです! (2020年4月1日 21時) (レス) id: de7effe731 (このIDを非表示/違反報告)
み - 褒められて照れる主人公がすごく可愛いです!!めちゃくちゃ面白いです!!! (2020年3月30日 17時) (レス) id: 2992cbf307 (このIDを非表示/違反報告)
志織(プロフ) - さちさん» コメントありがとうございます!面白いと言っていただけて嬉しいです。予定も立て込んでいますので出来る範囲での更新となりますが、お付き合いいただけたら幸いです……! (2019年8月7日 16時) (レス) id: f90efcc153 (このIDを非表示/違反報告)
さち - すごくおもしろいです。続きが早く読みたいです。よろしくお願いします。 (2019年8月6日 13時) (レス) id: 02606fd336 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:志織 | 作成日時:2019年6月17日 12時