HALLOWEEN ページ10
「トリック・オア・トリート」
開口一番に、彼はそう言った。
本日、10月31日。ハロウィン。そんな日に矢巾から「お家デートがしたい」とお誘いがあった。
何度かお互いの家に上がったことはある。やましいことなんて何もなく、一緒に勉強をしたり、映画を観たりと中々に健全なお付き合いだと思う。
まあそれはおいておくとして、行事好きな矢巾のことだからそうくるだろうと思った。「はい」と用意しておいたお菓子を渡せば、途端に渋い顔になる。
「鈍感なくせに、なんでこういうところばっかり…」
「う、うるさいな…ほら、入って。寒いでしょ」
「ん。お邪魔しまーす」
矢巾には先に部屋に行っていてもらい、私はお茶菓子を用意する。今日は映画かな、なんて思いながら扉を開けると、矢巾はホラー映画のDVDを取り出していた。
「ハロウィンだし、ちょうどいいよな」
「だね。それにしよ」
ローテーブルの上に持ってきたお茶菓子を置いて、DVDをセットするために矢巾に背を向ける。すると、まだ諦めていなかったらしい。私の服の裾を引っ張って言った。
「トリック・イェット・トリート」
「お菓子ならテーブルの上にあるからそれで手を打って」
「違う。俺はイェット、て言ったの」
え、と思った時には視界が反転していた。天井をバックに矢巾の顔。手は指を絡めて繋がれて、そのままカーペットに縫いつけられた。
「結子、恥ずかしがっていつも触らせてくんねーから。俺は、もっとお前に触れたい」
そう言って熱っぽい瞳で見つめられたら、あとはもう黙るしかなかった。
耳、首筋、鎖骨、挙句に鼻にまで矢巾はキスを落とした。ばくばくと血液が爆発的な速さで全身を駆け巡る。「映画、」「そんなん後でいい」と、最後には口まで塞がれてしまった。
「ん、っふ…」
「、中々慣れねーな。練習しような」
「んん…」
恋愛初心者の私には巧くキスすることができなくて、いつも途中で酸素不足になる。本当は、私も矢巾と触れ合っていたい。唇が離れる瞬間が、酷く名残惜しかった。
「大丈夫、二人で慣れてこ」
「…うん…」
真っ赤でかわいい、と頬を撫でた矢巾は幸せそうな表情で、ああこの人は本当に私を好いてくれているんだなと実感する。ねえ、私だって好きなんだよ。中々言葉にはできないけれど。
「ね」
「なあに」
「好きだから、悪戯させて」
そんな矢巾のお願いに、私は頷いたのだった。
トリック・イェット・トリート
【お菓子はいいから悪戯させろ】
終わり
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志織(プロフ) - あるてぃめっつさん» 矢巾くんの作品まで読んでいただけて嬉しいです…！思わずきゅんとできるような作品を作っていきたいと思っております。ご読了ありがとうございました！ (2017年12月4日 22時) (
レス) id: f90efcc153 (このIDを非表示/違反報告)
あるてぃめっつ(プロフ) - すごく今更感がありますがこちらも読みました…！矢巾くんいけめんすぎてしんどいです…(笑)これからもあなた様の作品できゅんきゅんさせてもらいます。 (2017年12月4日 21時) (レス) id: 3614360162 (このIDを非表示/違反報告)
志織(プロフ) - 蜜柑の皮。さん» 閲覧ありがとうございます！私も矢巾くんを推しているのですが、あまりに小説が少ないので今回書こうと決心致しました（笑）かっこよく書けているのなら幸いです。応援ありがとうございます！ (2017年10月23日 23時) (レス) id: f90efcc153 (このIDを非表示/違反報告)
志織(プロフ) - ゆゆさん» コメントありがとうございます！作品に出会えてよかった、そんな風に言って頂けるなんて書き手冥利に尽きます…！閲覧ありがとうございました！ (2017年10月23日 23時) (レス) id: f90efcc153 (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑の皮。(プロフ) - 矢巾くんの小説って珍しいですね！私は密かに国見くんと赤葦などを推しつつ、矢巾くんも推してたのでめちゃくちゃ嬉しいです！これからも応援してます！矢巾くんのかっこよさがやばい… (2017年10月23日 22時) (レス) id: 37e5c1fab4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：志織
| 作成日時：2017年10月23日 8時
