13話「私的には、その心意気で」 ページ13
「お願いしあーす!!」
突如響いた、お腹の底を揺らすような大声にびくりと肩が跳ねる。毎日聞いているから慣れてはいるが、不意打ちでこれをやられてしまうと驚いてしまう。
「なんだ、大丈夫か堀田さん」
「はぃ…」
「声ちっさ…そんなに緊張しなさんな。烏野のマネージャーさんに水道の場所教えてあげて」
「はい」
初めての練習試合で、他校がここへ来ることも含めてその雰囲気の違いに飲まれそうになる。そんな私の心情を察してか、花巻さんが指示をだしてくれた。これからは誰かに言われなくとも、自分で考えて動けるようにならなければ。
先輩マネージャーがいたのならばお手本にできたのかもしれないが、そうはいかない。私一人でも頑張らなくては、と意気込んで、真っ黒なジャージの集団の中にいる女子マネージャー目指して歩き始めた。私が彼女の元へつく頃には烏野の選手達はアップを始めていた。
「は、初めまして、マネージャーの堀田千冬です」
「初めまして、烏野マネージャーの清水潔子です」
ぺこり、とお互い頭を下げあってから、水道の場所まで並んで歩く。特に話すこともなく、無言で水道までの道のりをゆく。まあ、そんなものだろう。初対面だし。
水道につくと、どちらからともなくドリンクを作り出す。いつもはスクイズに水をブチ込むだけだが、練習試合の時はきちんとドリンクを作らなくてはいけないので大変だ。でも選手達のことを考えると、大変なのと同時にやり甲斐も生まれてくる。
「…1年生?」
「え、は、はい。1年、です」
「そっか。まだ慣れないことも多くて大変でしょう」
「そうですね、先輩マネージャーもいないですし…でも、本当に楽しいです。真剣なのって体力いるけど、一番楽しい」
マネージャーをしていて、尚且つお遊びではなく勝ちを求める部活に所属している人ならわかるはずだ。及川さんから聞いた限りなら、烏野はそういうところだと思う。堕ちた強豪、飛べない烏。そう呼ばれた時代を最も経験していて、しかし今まで諦めることなく踏ん張ってきたのだと。そう、言っていた。
『まあ、飛雄が行くくらいだしね、そういう部活なんでしょ』
一番の理由は、これかもしれないけど。
清水さんは口元に薄っすらと優しげな笑みを浮かべると、「そうね」と呟いた。
「負けないから」
「こ、こちらこそ!」
入部してから2週間。
たった2週間、されど2週間。
部員達の努力は、誰よりも
…なんて、それは烏滸がましいか。
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志織(プロフ) - ヒトさん» ホリミヤいいですよね!ハイキューを全面に押し出しつつ、ホリミヤ成分もそこはかとなく入れ込みたいと思います(笑)コメントありがとうございました! (2019年12月4日 21時) (レス) id: de7effe731 (このIDを非表示/違反報告)
ヒト - ホリミヤネタ最高です。 (2019年12月2日 21時) (レス) id: 3761af80f9 (このIDを非表示/違反報告)
志織(プロフ) - 八重さん» コメントありがとうございます!ヒロインなら私も金田一かなと思いますが、国見は何となく自己主張強そうなのでああいう感じです(笑)私はギャグセンスがないのでは?と思っていたので、面白かったと言っていただけて何よりです! (2019年8月7日 16時) (レス) id: f90efcc153 (このIDを非表示/違反報告)
八重(プロフ) - 面白すぎてずっと笑ってたら姉に(・∀・)<ウルセェェェェエエって言われましたどうしてくれるんですか?(謎) (2019年7月27日 13時) (レス) id: 9f24637045 (このIDを非表示/違反報告)
八重(プロフ) - いやぁー私思うんすけど、やっぱりヒロインは国見じゃなくて金田一だと思うんですよぉー(笑) (2019年7月27日 13時) (レス) id: 9f24637045 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:志織 | 作成日時:2018年4月7日 10時