青城マネジ、ギャップやべえ【青葉城西】

14話「“天才”」 ページ14

――天才だと、一口で片付けてしまうのは実に惜しい。
そこへ辿り着くまでにどれ程の努力と苦悩があったのかは、たぶん当人と、それをきちんと見ていた人にしかわからないのだろう。


他人はそれを理解しようとしない。他人事だからだ。世の中なんて大概そんなもので、冷たいと言われればそうかもしれないし、けれど当たり前だと言われれば反論の余地はないだろう。親しい人ならともかく、誰かもわからない他人への関心なぞ上っ面のみだ。もちろん、そうじゃない人も一定数はいるのだろうけれど。


あくまで持論だ。きらきらしいものは特別だけで出来ているわけがないと思う。なので、“天才”だけで終わらせていいものかと考えてしまうのだ。まあ、天才の過程を知ったうえで、嫌がらせでそう呼ぶ人もいるだろうけど(うちの主将はこれに当てはまるだろう)。


――けれど、思ってしまったのだ。影山飛雄は、天才だと。


「な、んだよ、あの速攻…」


隣にいた志戸さんが唸るように呟いた。
素人目にもあれが異常だということはわかる。スパイカーが、目を瞑っている？ どうやって打っている？ 答えは、『影山飛雄がスパイカーのスイングに完全に合わせてトスしている』ということ。らしい。
まさしく神技。度肝を抜かれた気分だ。


「…すご、」


ぽろりと本音がこぼれ落ちる。それを拾う者はいない。


その後ようやっと接骨院から戻ってきた及川さんによって、チーム内の雰囲気が変わった。やはり主将がいると一味違う。コーチは及川さんを接骨院に届けてすぐこちらへ戻ってきたので、車じゃないぶん学校へ来るまでに時間がかかったのだろう。及川さんが帰ってきたらほっとした私がいる。別に他の部員を信じていないわけではないが、チームをまとめる立場にある先輩を、たぶん私は特に頼りにしているのだろう。


結果はうちのチームが負けてしまったけれど、公式試合の前にあの速攻と烏野の雰囲気を知れて良かった。戦果はきちんと得ている。


それに、国見と金田一も少しばかり明るくなったように感じる。向こうの影山と中学時代ひと悶着あったらしいということは聞いていたが、どうやら丸く収まったようだ。二人が刺々しいのは、私は嫌だ。けれど、辛そうな顔をするのはもっと嫌だ。仲直りや和解とまでいかなくても、お互いを許せるようになったのなら、それでいい。
　
　
　
　

　

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