ヒャクジュウロク、他人を想う。 ページ20
「ちょっと笹谷ん、ちゃんと説明してよ」
「あのな及川、説明出来かねるから悩んでんだろ。……ま、そうだな。子供の頃さ、夜トイレに行くまでの暗い廊下とか、静かな物置部屋とか、すげえ怖くなかった？ 全く別の世界みたいに感じたり」
「ああ、そういやガキん時は怖かったわ」
「岩泉でもあるんだな、そういうの。俺もあるなぁ」
「あるけど、それがどうしたの？」
「たぶん、それに近い。あの子は…まあ、なんていうか。あの怖かった場所にずっといる子だな」
意味わかんねえと苦々しくボヤいた岩泉に笹谷は肩を竦める。この違和感の正体を掴めたならもう少しはマシな答えを用意できたのだろうが、生憎笹谷はホラ吹きではない。確証のないことは口にはしない、慎重に構えるような人間である。……その違和感の正体を、笹谷はなんとなく感じ取ってはいるが。
「それ以上は本人に聞いてくれよ、ただでさえ野暮な話なんだから」
笹谷は他人の心を土足で荒らすのは、好きではなかった。
(まあ、こんなシゴトしてる俺が言えた義理じゃあないのは、わかってんだけどさ)
難儀な話だ、と目の前で『意味がわからない』というような顔をする三人に、短くため息をついたのだった。
︙
「は？ 影山がいない？」
「ああ。今、日向達が影山のいそうな所にコンタクトを取ってるんだけど、見つからないみたいで」
「どうすんだ、大地」
菅原にそう問いかけられた澤村は難しい顔で黙り込んだ。
暫くして考えが纏まったのか、口を開く。一瞬躊躇ったように見えたのは、たぶん気のせいではない。菅原と東峰はなんとなくそう察したが、それを言葉にすることはしなかった。
「……痣、あるだろ。影山の、腕に」
「……？ ああ、そういえば」
「確かにあったわ」
「前に清水が『影山の痣、なんか変』って言ってたんだ。つーことはさ、何かはあるんだなって思ったわけよ。……で、現時点で俺達の中に視える奴はいない訳だ」
「確かに」
「オッケー、清水に連絡な！」
話が早くて助かる。そんな意味を込めた笑い方に、東峰は「落ち着いているなあ」と胸をなでおろした。澤村は肝の据わった男だ。それを何より感じているのは、昔から一緒にいる東峰と菅原だろう。辛苦を共にしてきた同士であり、家族である。
それは勿論、今いる仲間達もそう。彼等にとっては大切な家族だった。
「絶対に取り戻す」
彼等の意志は、固かった。
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藤猫 - 終わりなんですか？！続きがすっごい気になるんです！どうか続きを書いてくださいませんか？！楽しみに待ってます！！ (2021年8月9日 14時) (
レス) id: 8264cf3ee7 (このIDを非表示/違反報告)
ノウ - 終わりですか?! 続きがすごく気になります！ (2021年6月30日 1時) (レス) id: 208a367e6d (このIDを非表示/違反報告)
織叶(プロフ) - 志織さん» そうだったんですね…！！志織さんの丁寧な描写が大好きなので、続くということが知れてほんとうにうれしいです！！いつまでも待てます！！これからもずっとずっと応援させてください！！！ (2021年1月30日 8時) (レス) id: bc2d105faa (このIDを非表示/違反報告)
志織(プロフ) - 織叶さん» お付き合い下さると嬉しいです。いつも私の作品を見てくださってありがとうございます！(*´∀｀*) (2021年1月30日 2時) (レス) id: de7effe731 (このIDを非表示/違反報告)
志織(プロフ) - 織叶さん» 加筆修正したお話がたまったらこちらにサイト先のリンクを貼ろうかなと考えておりますが、暫くは手直しした話を再アップという形になるかなと思います。長い間、待っていて下さってありがとうございます。先の展開へ進むのはお待たせしてしまいますが、宜しければ (2021年1月30日 2時) (レス) id: de7effe731 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：志織
| 作成日時：2017年8月22日 20時
