【Dead by Daylight】殺戮の外【短編】

5.A Virtuosic Peace of Mind with "Old Soldier" ページ6

『熟練の安らぎと老いた軍人』


ネアとローリーと少し話をした後，妙な静けさが焚火の周辺を襲う。

その静寂はこころなしか痛みを伴っていた。

その時，不意に4人の姿が影に包まれ始める。


「また僕たちなのか」

「チクショウ，やってやろうじゃねぇか！！」


探索から帰ってきたばかりのデイビッド・キングに酷くやつれた表情のクエンティン・スミス，

深く帽子をかぶり直したデイビッド・タップ，そしてクローデットが犠牲者として選ばれたようだ。

そう，彼らはエンティティの影に包まれてあの儀式場へと赴くのである。

みんなが必死に声をかけている中で消えて行った4人。

そのあとの空気が重たくて，Aは顔を俯かせた。


「なにも不安に思うことはないぞ」


いつの間にか隣に来ていたおじいちゃん、と言うのが正しいだろう老人がいた。

Aの隣に腰かけ，煙草を蒸かす。


「ワシらはみなあの儀式とやらを恐れておる，それは確かじゃ。じゃがな」


Aを見つめる目に力強い光が見えたような気がした。


「諦めてはならん，恐怖と狂気に呑まれてもならん。そしてなにより，ワシらは一人じゃない」


一人でないのならそれで十分じゃ、と老軍人ウィリアム・ビル・オーバーベックは微笑んだ。

助け合うことが出来る，死ぬその空間に自分は一人ではない。

それだけが支え，しかしたったそれだけでもとてつもなく大きな力を齎すことは明白だった。


「始めは怖いじゃろうが安心せい，ワシらがいつでもついておる」


その声に儀式に選ばれなかった生存者たちは強く頷いた。

死を繰り返す彼らの強さに圧倒された気分だ。

これが本当に仲間ならどれだけ心強かったか。


「そういえばA，ミンに会うのは初めてよね？」


ローリーに連れられて来たのはむすっとした少女。

黒髪で強気なその表情の美しさに見惚れてしまうほど。


「あたしフェン・ミン。よろしく」


それだけを言うとその場から去って行った。

彼女は一匹狼だから許してあげて、とローリーは笑った。


「ここにはいろんな奴がおる。みんなが一緒なら，逃げ切れるじゃろうよ」


そうね、とローリーも同意。

一人でない，仲間がいる。

それだけで彼らは戦い続けるのだ。

仲間、という存在はそれほど大きいもの。

自分は手にしてはいけないのだろう、と心のどこかでAは思った。




『個性豊かなサバイバーと固い絆』

6.Some Skill to Escape with "Solitary Survivalist" and "Lucky Gambler"→←4.A Joyful Talk with "Urban Artist" and "Determined Survivor"

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