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彼女は私を部屋に連れていきました。
そこで私は初めて、椅子と机を知りました。又、私がいつも不思議に思っていたぬめっとした茶色い塊と
黄色くどろりとした液体は、排泄物だとも知りました。正直、知らない方が良かったと思います。
そして食べる行為を覚えました。いつも先のとんがった武器を持っていましたが、実はそれは
食べ物を切り離して口に運ぶための道具だと教えてもらいました。私はそれまで人を殺める道具だと
ばかり思っていましたので、大層驚いてはしゃぎました。
「君さ、名前はある？」
『なまえ？』
「人には名前って言ってね、あれはこの人、あっちはあの人って区別するために与えられた言葉があるんだよ。まぁ、わたしにもないんだが…」
『…目が見えなければ触ればいい、耳が聞こえなければ見た目で見分ければいい』
「いいや。そう言うものじゃないんだよ」
『1、2、3、ではだめなのか』
「分かりづらいだろう？」
『体に触っただけで数字がわかるように、ハンコをつければいい』
「名前もプライベートだ。晒したいか晒したくないかは各自で選びたいだろう？」
『お前が貼っているその服とやらの布で隠せばいい』
「これは着ているんだよ。纏うと言ったら分かりやすいかな。…名前はね存在している一番の証拠なんだよ」
『…生きている？』
「あぁ。この世界に生まれてきて、自分はこれから生きていくんだという勇気と希望を背負って、その言葉を与えられる。そしてその名前を背負いながら、人は生きていると実感する」
『…くだらない』
「ふふ。そうか、くだらないと思うか。今はそれでもいいさ、いいやいずれ分るとも言えないな。けれど
生きたくなったら、せめてでも名前を与えてもらいなさい」
『そんなやついない』
「さぁどうだろうね。未来など誰にもわからないし、可能性を信じる他ないね」
『………』
正直うざったるく、どうでも良いと思いました。
彼はいつも私に新しいことを教えてていました。教えて教えて、そしてその度にその歴史と意味と、人の
素晴らしさを含みを持たせながら伝えて、私は顔を歪ませて頷いていました。
青空が好きでした。
それはその青さや暖かさに惹かれたからではなく、彼女を見上げた瞬間に突然に惚れ込んでしまったからです。
理由は秀でた頭脳でも分かりませんでした。彼女にそれを伝えると、目をぱちくりさせて、すぐに
口を拳一個ぶんくらい開けて笑い始めました。
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グリム(プロフ) - 凄く面白いです！続きが凄く気になるので、更新をいつも楽しみにしています！ (2022年11月26日 15時) (
レス) id: 66f712e8a8 (このIDを非表示/違反報告)
きぬ - ヤミさんオチが良いです！！！！！！！！ (2022年7月8日 22時) (レス) @page21 id: 3413745361 (このIDを非表示/違反報告)
天宮広海(プロフ) - 面白いです!続きが気になります！更新頑張ってください! (2022年3月7日 19時) (レス) id: 85bad9f447 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：みるく | 作成日時：2022年3月3日 3時
