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「…恐らくね、Aは重度の死にたがりだと思うんだ。そしてその理由に、彼女を
縛っている何かがあると思うんだ。」
「死にたがり、ですか…。」
「…うん、私も彼女と会いたいけれど、今は白夜の魔眼の件もあって忙しくてね。
フエゴレオン。君にどうにか彼女のジサツ行為を止めて欲しいんだ」
「勿論です…!!」
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フエゴレオンは、Aに巻かれた包帯を見ながら、隣で「おもしろーい」と
本を眺めながらはしゃぐAに安心する。好きなものがあってくれれば、少しでも
彼女を助けられる一筋の光になるかもしれないからだ。
「……そんなに知識をつけてどうするのだ」
『うーん、覚える行為が好きなんですよ。考える行為は無意識に脳が行っていますけど
…前頭前野とか海馬体が強いんですかね」
「すまない、脳には詳しくないんだ」
そしてAは、ふふとサラリと肩に掛かった髪をひとつ、かき分けて立ち上がった。
フエゴレオンの後ろへと周り、「あ、前向いててください」と両手でフエゴレオンの頭を
触る。行動が空気に解けるようにぬるりとしているので、すこしシュッとしてしまった。
『はい、ここが脳です』
「それは知っている」
『一応ですよ。そして…あ−、うん。そうそうここら辺です』
「両サイドにあるのか?」
『はい、丁度私が指置いてる所の少し下にあります。
海馬体は空間や場所の記憶に携わるので、貴重なんですよ』
「ほう…ならば、Aは海馬体が強いのだな」
『私も昔からそう、目鼻を付けていましたけどね』
やんわりと、耳の近くでそう呟いたAの声は、久しぶりに温かみを含んでいるようだった。
いつもの、計画を見る傍観者の声ではなく、携わってくれるような、夜遊な声。
ほんの少しだけ、フエゴレオンも意識してしまう。Aは嫌な噂も聞くが、同時に
それに惚れる者の噂もよく聞くから。
『フエゴレオン団長、髪がこれでもかと言う程太陽の色ですね』
「獅子は、太陽の象徴だからな」
『ならば、アポロンでしょうか。焼き尽くすような熱さの炎の塊の化身化です』
「確か、ギリシャ神話だったな」
『はい、主神ゼウスと女神レトの間に授かった子です』
「…… 月桂樹でもお前につけてみたい所だが」
『似合いません。神聖化したものでしょう、それは』
お互いに、笑い合い話を進める。フエゴレオンはそれにやはり安心し
その後も、何時間かAの話に付き合った。
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作者名:みるく | 作成日時:2022年1月5日 18時