もっと、深く、愛して【中原中也】

歪な愛 47 ページ48

どんどんと深まる口付けに、中也の余裕のなさが見える


唇を離すと中也はAをの頬を熱い手でするりと撫でた


物欲しい、もっと、中也に愛されたい


「中也さん…っ」


そんな想いで名前を呼ぶと、中也は撫でる手を止めて


驚いたような…見蕩れたような、面食らったような、そんな顔をした


考えていることは、同じだった


中也は車から降りると愛の手を引き、部屋へと歩き出した






深くて濃厚なキスにAは捕われ、囚われ、溶かされていく


上に覆いかぶさり頬を撫でながら口付けを繰り返す中也に、Aも首に手を回して必死に応える


熱い、何処までも熱い


身体の芯まで中也の感触に、温度に、想いに、溶かされて満たされていく


「はぁっ…A…」


相変わらずらしくない、余裕のない顔と声


見つめ合うと、また口付けが落とされた


「んっ…」


「A…っ、好きだ、愛してる」


口付けの合間に低く、耳元で熱い息を掠めながら囁かれ、身体がきゅんと疼く


もう、頭が中也に支配されてしまったように、目の前の中也のことしか考えられない


その口付けの合間にドレスの裾に手を入れ、中也はするりと太腿を撫でていた


その手つきにさえ、甘い声を上げてしまう自分がいる


「中也…っ、」


中也の手がもどかしくて身を捩り名前を呼ぶと、中也は撫でるのを止めて口を開いた


「なァ…、俺に…手間の全てを捧げてくれないか？」


もう返事なんて決まっているのに


中也は青い瞳を不安げに揺らして見つめていた


noなんていう返事をさせないくせに、私を愛しているからこそ、ちゃんと確認してくれる


嗚呼、狡い人、優しい人、私を奪って離さない人


そんな中也の頬をそうっと包み込み、Aは精一杯微笑んだ


「中也に…私の全てを捧げるよ」


「中也も…私に全てを捧げて欲しい」


答えると中也はその瞳を大きく見開いて


そして頬のAの手をとるとその手の甲にそっと優しく口付けを落とした


「約束する…Aに俺は全てを捧げる」


中也は伏せていた瞳をAに向け、真剣な表情をした


言葉に出来ない幸福を感じて涙を目に貯めると、中也は幸せそうに微笑んだ


暫く見つめ合ってからAは中也の指に指を深く絡めて


「中也…」


「もっと、深く、愛して」


その懇願に中也は応えるように、中也はAと口付けを交わしたー…

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