作戦参謀と五大幹部サマ【中原中也】

作戦参謀 ページ1

(不味い、不味い……！)


泣く子も黙るポートマフィアの五大幹部、中原中也は拠点の廊下を全力疾走していた


任務が予想以上に手こずってしまい、時計を見れば、もう約束の時間を二十分も過ぎている


そう、今日は作戦参謀と作戦の確認をする会議の日なのだ


その作戦参謀の姿を思い出し……中也は思わず顔を顰めてため息をついた


(彼奴……すげェ苦手なんだよな)


第四会議室の手間で全力疾走にブレーキをかけ、息も整えずに入り込む


「悪い！待たせた！」


それと同時に、無愛想な女が此方を振り向く


「いいえ……お気になさらず、早速始めましょう」


そう言ってテキパキと資料を出し始める女に、中也の申し訳ない気持ちは飛んでいく


(ほんっと、なんつーか、わかんねぇ女……)


半ば呆れの気持ちも生まれつつ、中也は椅子に腰掛けた


マフィアの作戦参謀……七瀬A


中也の知る限り、この女以上に無愛想な女はいない


モヤモヤとする気持ちを切り替え、中也は会議を始めた




「じゃあ、ここの部分、首領と検討しておきますので」


「おう、宜しく頼む」


作戦の不備、調整を頼むと、Aは律儀にお辞儀をした


「お疲れ様でした」


「お疲れ」


たったそれだけ、仕事に関すること以外、会話はしない


全く気持ちの篭っていない"お疲れ様"を言って、中也は会議室を後にした




その小柄な背中がドアが閉まって見えなくなると、作戦参謀……Aはふぅ……とため息をついた


「緊張した……」


若干涙目になりながら、Aはまだ緊張で高鳴る胸を押さえる


この女、無愛想なのは確かだが……


実は極度の人見知りなのである


「中原幹部、忙しいところ、走ってきてくれたのに、私ってば、気遣いも出来ず……」


一人で会議室をウロチョロする姿は、とても普段の作戦参謀だとは思えない


「うう、私ってばなんでこうなんだろ」


自責の念に囚われ、Aはしゅん……と勝手に落ち込む


(あの人にも、素直になれなくて……)


七瀬は恋しい人を思い浮かべ、頬を朱に染めた


「会いに行こう……話、出来るかな」


今度は違う意味で高鳴る胸を押さえて、Aは会議室を出た

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