さぁ、利害は一致した ページ8
「…はい?」
思わず、そんな言葉が出てしまった
だって、今の発言はなに?
当惑するAに、太宰は目を見開き、それから嬉しそうに輝かせた顔を近づけ、手を握った
「本当かい!?家政婦になってくれるんだね、嬉しいよ!」
その満面の笑顔、言葉に、Aは状況を理解してぶんぶんと真横に首を振る
「は、はぃい!?今の言葉は、疑問系のはい?ですから、はいじゃないです!」
「うわぁ、また返事してくれた!そんなに私の家政婦がやりたいのかい?仕方ないなぁ」
わかっている、この男、わかっているのだ
わかっている上でこんなににこやかな笑みを浮かべているのだ、恐るべし太宰治
「…一寸!勝手に決めないでください!」
幾ら上司相手でも、怒鳴らないわけにはいかなかった
行成声を張り上げると、太宰は驚いたように「うわっ」と声を出した
やってしまった、と内心思いつつ、それでもAは言葉を続ける
「…というか、何故ですか?
それに、本気ですか?からかっているのなら辞めてください」
普段の彼の認識から、刺々しい言葉が次から次へと出ていく
じっと微動だにしない鳶色の瞳を見ていると、その目はやがて優しく細められた
「君のご飯が美味しかったから
毎日食べたいなぁって思った」
何時もの飄々とした姿からは想像の出来ない、彼の眼差しと言葉に、不覚にも男性経験のないAの胸は高鳴る
「そんな、」
「それに、君、家事をしている時の方が生き生きしてたよ
探偵社で何時も苦々しげにパソコンと睨めっこをしているときより、ずっとね」
その言葉に、Aは息が喉に突っかかるのを感じた
上司である想い人に注意され、報告書を直すだけで、少しも社の役に立てない毎日は、Aにとってずっと苦痛だったのだ
(…太宰さんに、お見通しだったなんて)
なんだか息苦しくなって、下を俯くと、きゅっと大きな手に、両手が包まれた
「君は私の家事だけしていればいいのだよ?」
「家事の出来ない私、仕事の出来ない君、お互いの利害は一致している」
柔らかな太宰の声に、逆らおうとしつつも、如何しても納得してしまう
「うっ…、確かに」
完全に敗北を喫し、項垂れるAとは対照的に、太宰はにっこりと…否、にんまりとした笑みを浮かべた
「これから宜しくね、私の家政婦さん」
さぁ、利害は一致した
相反する2人の恋が幕を開ける
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輪廻 - 前作も素晴らしい作品でしたが、今回もとっても面白くて、キュンキュンしております!( ⁎ᵕᴗᵕ⁎ )❤︎この小説、もう更新はなされないのでしょうか?とっても面白いので、国木田さんの言葉の続きが気になります! (2022年5月8日 8時) (レス) @page12 id: 3d9ac3cda8 (このIDを非表示/違反報告)
AS(プロフ) - 甘党主義者さん» こんにちは!コメントありがとうございます!前作から…!とっても嬉しいです!ほのぼの恋愛を目指しているので、少しでもゆったりしつつ、きゅんきゅんして下されば幸いです!これからも頑張ります!(´∀`*) (2018年3月22日 23時) (レス) id: 3a55b14ac0 (このIDを非表示/違反報告)
甘党主義者(プロフ) - こんにちは、読ませていただいています! 前作から読み始めているんですけど、凄い面白いです(*^^*) これからも更新、楽しみにしています!! (2018年3月22日 8時) (レス) id: 5924d6346b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:AS | 作成日時:2018年3月19日 16時