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此方向いて 17 ページ18

「あ〜…、つまらないなぁ」



読んでいた愛読本を閉じて布団の上に置いた


街をぶらつく事も、仕事をする事も出来ず、太宰の暇は最高潮だった


先程取り替えたばかりの冷しタオルは生ぬるくなり、太宰は顔を顰める



「…もう、早く帰ってきてくれないかなぁ…」



看病してくれるAがいない、それだけで何処か心細かった


一人は慣れているが、風邪の時に一人きりは嫌だ


深い溜息をついたとき、手元の携帯電話が振動し始めた


勢いよく手に取れば表示名は"国木田"


「国木田くんか…」


少し残念に思う自分に気づかないまま、太宰は携帯電話を手に取った


「はい、もしもし?」


「太宰か?実はAがー…」


いつもより切羽詰まった国木田の声


後の言葉に、太宰は大きく目を見開いて息を止めた






眼の前に突きつけられる、買い出しの大きな袋二つ


「探偵社の前に転がっていたんだ…、買い出しに行って以来、Aと連絡がつかん」


「あのAが買い出し袋を地面に放り出すわけがない、可能性とするならばー…」




「誰かに攫われた」




慌ただしい探偵社内に、国木田の重い声が響く


「…乱歩さんは?」


無表情で問う太宰に、国木田は溜息をついた


「今は東北に出張中でな…、連絡がまだつかない」


「監視カメラは」


「…丁度死角のところで攫われたらしい、全く映ってない」


国木田の返事を聞くと太宰はふらり、不確かな足取りで扉へ向かう


「こんな時に何処へ行く!?」



「…きっとすぐに戻ってくる、私は社員寮に戻るから」



「後は宜しく」と去っていく太宰に、国木田は机にドンっと拳を叩きつけた


「何なのだ、彼奴は…!Aが行方不明になっているというのに」


怒りに燃える国木田を、敦と谷崎が宥めて止めたのは後の話





走る


走る


身体が熱いのは、走っているだけじゃない


体温が上がっていく


太宰はヨコハマの街を走り回っていた


「う…」


途中、頭痛に襲われて廃ビルの壁に寄りかかる


それでも、太宰はすぐに夜のヨコハマの街を見つめた



「何処にいるの、Aー…」



"攫われた"その単語を聞いたとき、背筋が凍りついた


(ありえない、あの子が私から離れていくなんて)


そう思っても、どうしても生きた心地がしなくて


ふらり、また重い身体を動かすと





「…太宰さん?」





後ろから聞こえた、馴染みのある声に、太宰は振り向く


すると、Aが首を傾げて太宰を見上げていた

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設定タグ:文豪ストレイドッグス , 中原中也 , 太宰治   
作品ジャンル:恋愛
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AS(プロフ) - ただのニジオタさん» コメントありがとうございます!明日には公開出来ると思うので、お楽しみにしていて下さい!これからも全力で頑張っていきます!いつも温かな応援、嬉しいです(´ヮ`*) (2017年9月23日 23時) (レス) id: f709ff2152 (このIDを非表示/違反報告)
ただのニジオタ - 更新頑張ってください!!!!ほんとに応援しています! (2017年9月23日 16時) (レス) id: 5943eb19db (このIDを非表示/違反報告)
AS(プロフ) - 姫蛍さん» 私も書きながら悶えてしまいました…←双黒にあんなに想われてドキドキさせられて…もう夢主になりたいです(笑)コメントありがとうございます(*´v`)これからも頑張ります! (2017年9月21日 23時) (レス) id: f709ff2152 (このIDを非表示/違反報告)
姫蛍(プロフ) - 一言言います。悶える。 (2017年9月21日 22時) (レス) id: 3003a1c972 (このIDを非表示/違反報告)
AS(プロフ) - 夜野猫さん» やっと自分の想いを認められた太宰です…、すっかりデレデレになってますね(笑)書いていて、双黒に好かれて羨ましい限りです(´ω`)ありがとうございます!更新頑張ります! (2017年9月18日 22時) (レス) id: f709ff2152 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:AS | 作成日時:2017年9月3日 17時

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