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此方向いて 16 ページ17

「うわぁ〜っ!!」




Aは目の前の光景に感嘆の声を上げた


ヨコハマの東京タワーとも言える、マリンタワーの展望台に、二人はいた


「なァ…こんな所で本当に良かったのか?」


中也のそんな言葉にAは少しキッと中也を見た



「マリンタワーずっと来たかったんです!それにしても綺麗ですね…!」



中也から一変、再び夜景に目を向けて、観覧車のライトアップの様に目を輝かせるAの横顔を見て、中也は自然と口元に弧を描いた



「…そ、じゃあ良かったぜ」



暫く展望台フロアを歩いて夜景を見て回っていると、人が全くいない事にAは気づいた


「…あれ、マリンタワーって、人が居ないんですね」


目をぱちくりさせるAに、中也は呆れと共に苦笑する


「ンな訳ねェだろ」


中也はそう言うとスっとAの耳元に顔を寄せた





「ー…手前の為に、貸切にしたんだよ」





突然囁かれた甘い台詞、腰に絡まる手に、Aは身体を震わせる


「ッ…!やっ、変態っ!セクハラ!」


「いてっ!いでっ…!手前ェ!」


バシバシと中也の身体を叩けば、中也は眉をヒクヒクさせながら身体を離した


「もう…気安く触らないで下さい!私はー…」



"想い人がいるんです"



そう言おうとした所で、Aはふと、思い出した


「あ…」


顔から血の気が引いていき、背中に悪寒が走る



如何して忘れていたのだろうか、病気の太宰さんが私を探偵社員寮で待っているというのに!



「…おい、どうした、A」


顔を覗き込まれ、Aはバッと顔を上げる





「ー…帰らなきゃ」




Aのうわ言の様な呟きに、中也は「は」と、目を丸くする


次の瞬間、走り出すAの手を、中也は慌てて掴む


「おいおいおいおい…、どこ行くんだよ!」


「ごっ、ごめんなさい!私帰らなくちゃならないんです…!」


中也の手を振り切ると、Aは振り向いて中也に頭を下げた



「今日はありがとうございました…!さようなら!」



くるり、踵を返して再度走り出すと




「おう、またな!!」




後ろから大きな声が聞こえてきて、Aはもう一度振り返って微笑んでから走った








「…行っちまった」


1人、展望台に取り残された中也は残念そうに呟いた


手すりに寄りかかり、Aの去った方向を虚しく見つめる


「"さようなら"か…」


「今度は"またね"って言わせてやる」


中也は胸に秘めた決意を現すように、グッと拳を握ったー…

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設定タグ:文豪ストレイドッグス , 中原中也 , 太宰治   
作品ジャンル:恋愛
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AS(プロフ) - ただのニジオタさん» コメントありがとうございます!明日には公開出来ると思うので、お楽しみにしていて下さい!これからも全力で頑張っていきます!いつも温かな応援、嬉しいです(´ヮ`*) (2017年9月23日 23時) (レス) id: f709ff2152 (このIDを非表示/違反報告)
ただのニジオタ - 更新頑張ってください!!!!ほんとに応援しています! (2017年9月23日 16時) (レス) id: 5943eb19db (このIDを非表示/違反報告)
AS(プロフ) - 姫蛍さん» 私も書きながら悶えてしまいました…←双黒にあんなに想われてドキドキさせられて…もう夢主になりたいです(笑)コメントありがとうございます(*´v`)これからも頑張ります! (2017年9月21日 23時) (レス) id: f709ff2152 (このIDを非表示/違反報告)
姫蛍(プロフ) - 一言言います。悶える。 (2017年9月21日 22時) (レス) id: 3003a1c972 (このIDを非表示/違反報告)
AS(プロフ) - 夜野猫さん» やっと自分の想いを認められた太宰です…、すっかりデレデレになってますね(笑)書いていて、双黒に好かれて羨ましい限りです(´ω`)ありがとうございます!更新頑張ります! (2017年9月18日 22時) (レス) id: f709ff2152 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:AS | 作成日時:2017年9月3日 17時

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