第弐拾夜・「いーこと」 ページ20
突然の言葉にポカンと口を開け、驚く。
だけど。
「もしかすると・・・そうかもしれません」
ぽつりと、
小さく開いた口から声を漏らしていく。
外から聞こえる雨音と声が重なり、
部屋に響き渡る。
「彼の大切な人・・・千鶴さんの写真を破いてしまったのは、
千鶴さんに嫉妬していたのかもしれないから・・・」
不意に、神官さんの、ルビーを埋め込んだかのような
揺れる紅色の瞳と視線がぶつかり、
そっと逸らす。
そして、ゆっくりと顔を横に振った。
「けれど、私の恋は叶わないでしょう。
だって、私は最初から嫌われているのですから。
私が、恩人の写真を盗んだりしていた時から・・・
いいえ、それよりずっと前からかもしれません」
「どちらにしろ、彼は私にだけ嫌そうな、呆れたような顔をして、
苛立っていそうな顔をして会話をしていました。決して笑うことなんてありませんでした。
昔はもっと笑いかけてくれていたのになぁ・・・。
他の方・・・例えば神官さんには愛想良く、可愛く喋っているのに」
段々と、声が震えてきていることに気づく。
神官さんの前で涙なんて零したくないのに。
弱いところ、見せたくないのに。
何故だか、溜めてきていた感情が
一気に溢れ出してしまいそうになる。
それを必死に抑えて、
にこりと微笑む。
その微笑みが、不自然だったとしても
構わない。
私の恋は、
蝉の一生のように、すぐに朽ちてしまうものだと
最初からわかっているのだから。
「だから、私の恋が実ることなんて
決してないのです」
神官さんはその言葉を聞き終えると、
私のうねる黒髪を指に絡めた。
「・・・・もう、諦めてしまうのは、まだ早いと思うぜ。
俺は、紅覇の気持ちを知ってるから、あえて言わないけど
まだ諦めるのは早い」
神官さんは慰めるかのようにそう言うと、
指から絡めていた髪を取ると、
そっと私の頭を撫でてくれた。
「俺は・・・さ、
いつもAのこと、一番に考えてる。
だからさ、いーこと思いついちゃったんだよなぁ・・・!」
神官さんは、小さい子のように嬉しそうに笑うと
私を力の限り強く抱きしめた。
ふわり、と桃の匂いが鼻腔をくすぐる。
ふわふわとした神官さんの髪が頬に当たり、
密着しているんだなという気になって
妙に落ち着きがなくなり、心臓がどくどくと暴れるように大きく、速く脈打つ。
42人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「アニメ」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あぉぞら - すいません!紅覇くんの消してしまいました…。短編集書いてるので、良ければそちらを…!すいません!玲琉.さんの作品、大好きなんでこれからも読ませて頂きます! (2015年6月22日 1時) (携帯から) (レス) id: 0a5444ed6a (このIDを非表示/違反報告)
玲琉.(プロフ) - あぉぞらさん» コメントありがとうございます!そう言ってもらえてすごく嬉しいし励みになります・・・! あぉぞらさんの小説は時間があれば是非読ませて頂きます・・・! (2015年6月9日 18時) (レス) id: 7d3c1dd707 (このIDを非表示/違反報告)
あぉぞら - 私、小説の一気読みはしないんですが、この小説は面白すぎて一気読みしました!私も紅覇くんの小説かいてるので、良かったら見て下さい! (2015年6月9日 1時) (携帯から) (レス) id: 0a5444ed6a (このIDを非表示/違反報告)
もちづき。(プロフ) - 玲琉.さん» ひえええぇありがとう・・・!!発想力というか妄想りょ((ゲフンゲフン。うん!ちょっと息抜きとかに読ませてもらうね! (2014年12月29日 14時) (レス) id: 8ea19f9ae6 (このIDを非表示/違反報告)
玲琉.(プロフ) - もちづき。さん» 来てくれて有難うー!!!!つきちゃんは文才あると思うよ^^っていうか恋愛のシチュエーションとかの発想力がすごいと思う!この小説はマギ知らなくてもわかる内容だと思うよ・・・!多分・・・!良ければ全部読んでやってね()綺麗な文章とか何それ嬉しすぎ>< (2014年12月29日 14時) (レス) id: 754b0bfd10 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:玲琉. | 作成日時:2014年4月4日 18時