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乗員収集 ページ17

翌朝、トルトゥーガの港にギブスの集めた船員候補達が整列していた。


航海士のギブスを含めた全員が浅黒く日焼けし、着ている服もボロボロで風景的には、一人粧し込んだような私がここにいることが場違いに思える。


みんな何らかの苦悩を強いられてきたようだ。


「いかがです?船長。誠実な海の男ばかり。」


しかし、その誠実な海の男達とやらの目を見た感じでは熱意は微塵も感じ取れない。


どこを見ているのかわからない者や舌を無くし、オウムを連れる者、背の低すぎる者など個性的で多色な連中だったがみんな何となくぼーっとしていて海賊らしくないし、間抜けな顔をしている。


”誠実”と呼ぶにはいくら逆立ちしても程遠いようだ。


「勇敢で無茶もやれる。」


ギブスの胸を張った説明に呆れざるを得なかった。


勇敢かどうかは知らないが、一晩過ごしてみてこのトルトゥーガのことはよくわかった。


私の中での印象は、少し煩いが興味深い所もある風情豊かな街から、窃盗の横行する恐ろしい街へ大きく変わっていた。


此処はかなり治安が悪い。酒場でウィルに叱られたのも納得が行く。


恐らくこの船員候補達は貧しさのあまりから報酬のために命をも惜しまないのだろう。

それに船に乗れば暫くは飢えをしのげる。


「俺達の報酬は?」


順に船員候補達を見ていると、言葉使いに相応しくない女の声がした。


まだ飽く迄も船員”候補”なのにもう雇われた後の話をしている。随分と強気だ。


スパロウは声の主とみられる人物を探し当てて、深く被った帽子をゆっくりと取ると小麦色の肌をした髪の長い女性が姿を現した。


「アナマリア。」



スパロウは彼女と顔見知りなようでにこやかに話しかけたが、彼女はどうやらそういう気分ではないみたいだ。


バチン!!

遠心力で攻撃力の上がった平手打ちを、アナマリアは容赦無くスパロウの頬に食らわせた。


「どうせ身に覚えないって言うんだろう?」


せせら笑いを浮かべたウィルにつられて、その場にいた私を含む全員がスパロウを見た。


「これは覚えある…。」



スパロウは先程の偉そうな態度とは打って変わって打たれた頬を手で抑えながらバツが悪そうに答えた。

アナマリアに話を聞いてみるとスパロウにボートを盗まれたことが原因らしい。


彼女が強気でいられた理由が、ようやくわかった。

よれたシャツを用意するのさえやっとだった彼女にとって、ボート一つでも盗られた痛手は計り知れなかったことだろう。

幻→←トルトゥーガの住人



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Caesar(プロフ) - ティコ。さん» 返信遅れて本当にすみません!!m(_ _)m面白いという御言葉すっごくありがたいです!!ありがとうございます!!!更新頑張りますね! (2018年3月1日 19時) (レス) id: 0b14e887c8 (このIDを非表示/違反報告)
ティコ。(プロフ) - めっちゃ面白いです!!更新頑張ってください!あと、1つ質問なのですが、名前は固定ですか? (2018年2月28日 12時) (レス) id: e878cfb355 (このIDを非表示/違反報告)
ダージリン(プロフ) - むらなかさん» 追記:本当にありがとうございます! (2017年8月7日 21時) (レス) id: 85ba8e2866 (このIDを非表示/違反報告)
ダージリン(プロフ) - むらなかさん» あれ見たらファンになっちゃいますよね!その気持ち凄く共感できます!! (2017年8月7日 19時) (レス) id: 85ba8e2866 (このIDを非表示/違反報告)
むらなか(プロフ) - 私もパイレーツファンでいつも楽しく読ませていただいてます。更新楽しみにしてます!笑笑 (2017年8月7日 17時) (レス) id: ce8b8b5d42 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ダージリン x他1人 | 作成日時:2017年7月1日 15時

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