わからない。 ページ34
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「…A、」
腕の力が少しだけ弱まった頃、身体を震わせたままの彼が口を開いた。
耳元で軽く囁かれた言葉に私は言葉を失い、目を見開いて疑った。
「…私ね、嘘でそういうこと言われるの凄く嫌い」
嫌悪感を剥き出して、殺されるの覚悟で彼の肩を思い切り押してもビクともしない。
力の差、なんてものは歴然としていて。
女の私が男でしかも夜兎という要らないおまけ付きの彼に敵う筈もない。
それでも、胸の中で膨らむ戸惑いや色々な感情を揉消すために必死に抗った。
「…嘘じゃ、ないヨ?…信じて」
信じられない。
別に信じられなくなる程の何かをされたわけじゃないし、拒む理由もないのに頭と心が拒否をする。
嫌だ嫌だ、と首を振り続ける私がいる。
離して、と両手足を暴れさせる私がいる。
何故かよくわからない。
頭で考えることも心で受け入れることも出来ない。
それは本当に私が拒否しているのか、それとも私の器に収まり切らなくて溢れ出してしまっているからなのか、はわからないけれど。
今の私に「団長」さんの言葉を飲み込む余裕はなかった。
「…離して。…お願い、帰らせて」
此処に居られない。
貴方の側に居るのは息が苦しい。
帰ったらきっとこの混乱も解けるから。
こんなよくわからない状態は嫌だよ。
何もされてないのに感情が奥から奥から込み上げてきて吐き気がする。
溜まっていたもの全てが外に出たがって私の喉奥をノックするから。
目頭も段々熱くなってきて身体の異変を悟った。
もしかしたら身体だけじゃなく、私自身全てが何かおかしくなってしまったのかもしれない。
怖いよ。
何故貴方がそんなこと言うのかわからない。
何故相手が私なのかもわからない。
何故今この状態になっているのかもわからない。
この状態の流れに呑まれただけ?
そんな人じゃないのは私が一番よく理解している。
それだけの理由で貴方はそんなに苦しそうに言葉を発しない。
いつもの飄々とした態度で、冗談交じりに告げる筈。
わからないよ。
もう何も聞こえないように耳を塞いでしまいたいのに貴方が邪魔をするから。
頭が耳元の近くにある限り私が両耳を塞ぐことは不可能で、嫌でもその言葉は私の耳に届いて惑わせる。
そして苦しみの中に突き落とすんだ。
「……好き、…好きだヨ」
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*Shino*(一応受験生)(プロフ) - マリーさん» またまたお久しぶりです。もうすぐ冬休みということで、また復活してみました笑 前までのように定期的に更新できるわけではありませんが、時間が取れそうな時に話を作っていきたいと思います! (2017年12月18日 13時) (レス) id: 857fd7727f (このIDを非表示/違反報告)
マリー(プロフ) - *Shino*(一応受験生)さん» 覚えてくれていただなんて(滝涙)大変ですよね!体育祭だとか私も最近ありました!ちょっと遅い地域で。ここの神威も夢主ちゃんも作者さんも皆好きです!頑張ってください!ずっと応援してます!お忙しい中返信ありがとうございました! (2017年10月2日 1時) (レス) id: 5afa144aee (このIDを非表示/違反報告)
*Shino*(一応受験生)(プロフ) - マリーさん» 覚えてますよ!大分初期の方にコメントをくださった方ですよね…?復活しようと思ってたんですが…体育祭のある週に外部テストが連日…からと定期テストと鬼畜なスケジュールに挟まれてこちらに手が回らない状態です(>人<;) (2017年10月2日 0時) (レス) id: 857fd7727f (このIDを非表示/違反報告)
*Shino*(一応受験生)(プロフ) - ふぅさん» ありがとうございます!ここから少し変化後の日常を挟んで、吉原炎上篇に入るつもりなんです…!根気があれば洛陽篇もやりたいんです(願望)← (2017年10月2日 0時) (レス) id: 857fd7727f (このIDを非表示/違反報告)
*Shino*(一応受験生)(プロフ) - ミリアさん» 閲覧ありがとうございます!今は学校行事諸々で申し訳ないですがこちらに手が回りそうにないです…受験が終わり次第、更新出来るように頑張りたいと思います! (2017年10月2日 0時) (レス) id: 857fd7727f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:*Shino* | 作成日時:2017年1月25日 19時