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常田side
「A、」
後部座席から荷物を取りだして真っ先に見えた光景は、Aちゃんが彼氏に抱き寄せられている様子。
平気で怪我させるお前がなんでAちゃんを抱き寄せられて俺は抱き寄せられねえんだってムカついていれば、様子を伺うようにAちゃんが俺を見る。
どんな顔していいか分からなくてとりあえず笑顔で返すが、そんなに器用でもないのできっと苦笑いしてると思われているだろう。
Aちゃんから引き剥がされたコウくんとやらは、俺を見るなりあっ、と声を出して深々とお辞儀をした。
「お世話になりました、すみません」
「いえいえ...俺はAちゃんにたまたま会っただけなんで」
この男にAちゃんを手渡す事に苛立ちを感じる。
きっと自分の中で一瞬でも俺のモンになったような気にでもなってたんだろう。
だめだだめだ、イラついてんじゃねえと気持ちを落ち着かせて運転席へ乗り込む。
窓を開けるとAちゃんと並んで彼氏も俺の顔が見えるように少し屈んでいた。
「本当に迷惑おかけしました。
...あの、必ずお礼はしますから」
「礼なんてそんな事してねえから、
そんな事より、女の子に乱暴しちゃいけねえよ」
俺の言葉を聞いて俯く彼氏にじゃあ、と言って窓を閉める。
Aちゃんも申し訳なさそうに俺を見つめていた。
何もAちゃんが落ち込むことは無いと伝えたいが、それじゃあいくらなんでも彼氏への説教が過ぎるかと窓を開ける手を止めた。
代わりに”「連絡して」”と彼氏には見えないように口パクで伝えると、少しきょとんとしてから笑顔で大きく頷いていた。
コロコロ変わる彼女の表情に思わず笑みが溢れてアクセルを踏みながら手を振ると小さく手を振って返された。
車道を走りながら昨日から今までの少ない思い出を振り返る。神様か何かが俺にくれたチャンスだったのか、それとも情けだったのか。
頭の中で何度も何度も、笑顔で大きく頷く彼女がリプレイされる。
「...あんな顔するくせに、なんで俺じゃねえかなあ」
そんな負け惜しみを1人車の中で呟くのだった。
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舞(プロフ) - 更新頑張ってください^_^ 応援してます٩(^‿^)۶ (2月5日 2時) (レス) @page12 id: 17ec247796 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:なーご | 作成日時:2024年1月30日 4時