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「...大希さん、?」
微笑むように笑っている彼は、
名前を呼ぶと”ん?”と眉をあげた。
そんな大希さんに胸が高鳴ったのを焦り、目を逸らした。
「...手が、」
「嫌?」
「いっ、嫌とかじゃなくて...その......」
焦る私とは裏腹に随分余裕そうな声色の大希さんは、私が黙り込むと再び”ん?”と言って眉をあげる。こういう時はなんて返すのが正解か、なんて考えているうちに顔もあげられなくなってしまった。手を離すことも無くきっと私を変わらず見つめる彼の余裕ぶった様子が余計に言葉を詰まらせる。
「い、嫌ではないです......」
「じゃあ浮気やな」
心臓の音が更にスピードを増す。
そんなセリフを恥ずかしげもなく言う彼にとうとう痺れを切らして、外していた目線を彼に戻した。
「っ大希さんどういうつもりで、...って」
「ふふっ、わりい」
口を抑えて肩を揺らす彼。
「...殴りますよ、ほんとに」
「悪かったって」
大希さんはクスクス笑いながら私の手をそっと離して、コーヒーの入ったマグカップを手に取った。
自然とはあ、とため息が出る。
冗談でよかったという安心感と、彼の冗談に付き合わされてしまったという呆れが混ざったため息だ。
「変なことしないで下さい」
「他の男ならぜってえ平気でもっと変なことしてくるから」
「そんなことないですから。」
「そーやって男を舐めてっと殴られるより痛い目みんぞ」
「なっ...お説教ですか」
「説教ちゅーか、...教育?」
「ほんと殴りますよ」
楽しそうに笑いながら「まあ1発だけなら」と受け身をとる彼の腕を軽く殴った。
「ふつーにいてえ」
「次したら本気で殴りますからね」
はいはい、と笑う彼とは裏腹に本当はまだ胸がドキドキしていた。
*
「___て感じらしくて、どうしようかと」
「なんも知らねえって言うしかねえだろ」
「いやそうなんだけどね。
嘘ついちゃっていいのかなあって」
「別に俺の家で匿ってる訳じゃねえし」
喋り声が聞こえて、目を開ける。
薄手の毛布がかけられている事に気付き、
ソファでいつの間にか寝てしまっていたんだと理解した。
目を開けた先では新井さん、井口さん、そして大希さんの3人が小難しそうな顔をしていた。
「..あの」
仕事の話でもしていたら申し訳ないのでさっさと帰ろうと声をかける。私から見て背中を向けていた井口さんはうわっ、と体を跳ねさせて驚いた。
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舞(プロフ) - 更新頑張ってください^_^ 応援してます٩(^‿^)۶ (2月5日 2時) (レス) @page12 id: 17ec247796 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:なーご | 作成日時:2024年1月30日 4時