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『初兎、』


そう言って手を伸ばせば、目の前に広がるのは見慣れた自分の部屋。

まるで独りになった私を嘲笑うかのように、初兎がいなくなってから毎晩この夢を見る。


『もう、やだなぁ...。』


初兎のことなんか大嫌いなはずなのに、思い出すのは初兎との思い出ばかり。

私って、初兎がいなかったら空っぽの人間なんだな。そう改めて自覚した。


初兎のことが大嫌いでも、何度も何度も繰り返されるあの夢は、私に何かを訴えかけている気がする。


『何か、大切なことを忘れてる気がする...、なんてね。』


大きめの独り言を呟き、寝返りを打つ。

いやだなぁ。また寝たらあの夢みるのかなぁ。

そうやって悩んでいる内にも、どんどん時間は過ぎていく。


『寝たくないな。』


そうまた独り言を呟き、カーテンを開けてみる。

すると、そこに広がるのは綺麗な星空。

1、2、3...子供のように、一つ一つ星屑を数えた。

あ、流れ星...。


私は小さく願い事を三回唱えた。

ちょっとラッキー、なんて思いながらボーッと空を眺める。

初兎と一緒に見たかったな、そんな思いは心の奥底にしまいこんで。


『あ、そうだった。明日英語のテスト...。』


ふと思い出し、机に向かったはいいものの、全く分からない。

なにこの文章。日本人だから英語の勉強なんかしなくてよくない?


「ここは過去形の文やから〜、」


そう言って英語の文を指差す初兎。


「って、話聞いとらんやろ?ちゃんと聞け〜!!」


なんて半分怒りながら無邪気に笑う初兎。

嫌いなのに、大嫌いなのに。

なんでこんなにも涙が出てくるんだろう。


ポタポタと溢れ出る涙は、私の嫌いな英語の教科書に滲みを作った。


『嫌い、大っ嫌い。』


そう吐いた言葉は、誰の耳にも届くことなく消えていった。

いや、初兎の耳には届いただろうか。


『...解けた。』


昔、初兎が教えてくれたことを思い出して問題をやってみる。

すると呆気なく解けてしまった。

やっぱり、初兎がいなかったら何もできないな。


そんな自分が嫌になって、ベッドに寝転ぶ。


「おやすみ、」


遠くの方でそう聞こえた初兎の声を無視する。

そしてゆっくりと眠りについた。

次はあの夢、見ないといいなぁ。

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ちと(プロフ) - まじで泣いてしまう...初兎ちゃんと、夢主さんにはあのままの日常を送ってほしかったなぁ... (8月22日 15時) (レス) @page16 id: f6b0a849c1 (このIDを非表示/違反報告)
Near - ひーいれりすさん» 返信遅れちゃいました〜!すみません💦涙を止めること....できないですねw ハンカチで拭いといてください!!() (2023年3月26日 14時) (レス) id: 20a94c6827 (このIDを非表示/違反報告)
ひーいれりす - すいません誰か涙を止められる人はいませんか… (2023年3月6日 23時) (レス) @page23 id: 166743b295 (このIDを非表示/違反報告)
Near - 瑠夏さん» 目からスライムという表現で笑ってしまった() 人を泣かせる天才....。ありがとうございます(?) (2022年11月14日 20時) (レス) id: 20a94c6827 (このIDを非表示/違反報告)
瑠夏 - やばっ目からなんかスライムが止まらない(;~;)Nearさんは人を泣かせる天才かな?? (2022年11月14日 6時) (レス) @page23 id: 427d2fc8fd (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Near | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Naer/  
作成日時:2022年9月5日 18時

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