手紙 ページ4
フェンスを越えたところで目に入った。
そう。初兎が立ってたんだ。
『初兎。今から逝くからね。』
微笑みながらそう言うと、初兎は悲しそうな顔で首を横に振った。
死んじゃダメ。そう目で強く訴えかけている気がした。
なんで？疑問を浮かべて初兎を見ると、口パクで何かを伝えようとしていた。
い
き
て
今度はちゃんと分かった。
初兎は確かに私に向かって"生きて"。そう言ったんだ。
ハッとして初兎を見ると、もういないはずの初兎は一筋の涙を流していた。
"ごめんね"
遠くの方で、そう聞こえた気がした。
私はフェンスを再び飛び越えて、初兎の方に向かおうとした。
けど、そこにもう初兎の姿はなかった。
あぁ、全部私の妄想だったのかなぁ、なんて思って自嘲した。
『ははっ、』
そんな乾いた笑い声とは裏腹に、目から透明な液体が溢れ出す。
その液体を自分の涙だと認識するには少し時間が掛かった。
初兎に会いたい。くだらないことを話したい。また一緒にアイスを頬張りたい。
そう願えば願う程に虚しくなる。
初兎なんて、
『大っ嫌いだよ。』
私はそう吐き捨てるように言い残し、屋上を後にした。
結局人間なんてみんな嘘つきで。
信じるだけ無駄なんだって、心のどこかでは分かっていたはずなのに。
傷付いて、何かを失うまでそれに気付かない。
人間って...いや。私って、無様だなぁ。
そんな思いを書き消すように、私は一枚の手紙を書いた。
そう、初兎への手紙。
"拝啓大嫌いな君へ。"
何処にも行かへんからって。
ずっと一緒やでって。
私にとってはその一言で安心できたのに、今では安心なんてできない。
どうせ嘘でしょ、みんな私の周りから消えていくんだ。
昔の親友だって。お兄ちゃんだって。初兎だって。みんな消えていくんだ。
私はそんな思いを、初兎への手紙に綴った。
そして書き終えた手紙を丁寧に封筒に入れて、机の中に閉まった。
これからは独りなんだな。
ううん、元々１人が好きだったし、きっとこれで良かったんだ。
そう思って、私は瞼を閉じた。
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
大きなブレーキの音。
そして誰かに突き飛ばされる感覚。
あぁ、またか。
そう思って、後ろを振り返ると地面に倒れた初兎。
真っ赤な地面に真っ赤なシャツ。
『お願いだから、もうやめてよ...。』
私は動かない初兎を目の前に、そうポツリと呟いた。
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ちと(プロフ) - まじで泣いてしまう...初兎ちゃんと、夢主さんにはあのままの日常を送ってほしかったなぁ... (8月22日 15時) (
レス) @page16 id: f6b0a849c1 (このIDを非表示/違反報告)
Near - ひーいれりすさん» 返信遅れちゃいました〜！すみません💦涙を止めること....できないですねｗ ハンカチで拭いといてください！！() (2023年3月26日 14時) (レス) id: 20a94c6827 (このIDを非表示/違反報告)
ひーいれりす - すいません誰か涙を止められる人はいませんか… (2023年3月6日 23時) (レス) @page23 id: 166743b295 (このIDを非表示/違反報告)
Near - 瑠夏さん» 目からスライムという表現で笑ってしまった() 人を泣かせる天才....。ありがとうございます（？） (2022年11月14日 20時) (レス) id: 20a94c6827 (このIDを非表示/違反報告)
瑠夏 - やばっ目からなんかスライムが止まらない(;~;)Nearさんは人を泣かせる天才かな？？ (2022年11月14日 6時) (レス) @page23 id: 427d2fc8fd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Near | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Naer/
作成日時：2022年9月5日 18時
