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『…?藤井くん?』
「ちょっとちょーだい」
『え!?』
半分くらいを食べ進めた頃。
近づいてきた藤井くんの顔。
びっくりして首を傾げるけれど、返ってきたのはとんでもない答え。
『え、食べかけだよ…?』
「食べたい。あかん?」
『…いいなら、どうぞ…』
藤井くん。
間接キスってやつになっちゃうよ?
「ん、うまあ。
みかんも美味いで?食べる?」
『え…』
「ん」
口元に持ってこられたみかん飴。
チラリと彼を見ると頷かれる。
結局誘惑に負けて、彼を真似てみかんと飴を両方かじってみる。
『ん、みかんだ!』
「そらそやろ。
みかんちゃうかったらこの飴の中身なんやねん」
お腹を抱えて笑い出した藤井くん。
そんなに笑わなくてもいいのに、と拗ねると慌てたようにごめん!と謝ってくるから。
おかしくなって、私まで笑ってしまう。
「ごめんな?おもろくて、つい…」
『ふふ、私もごめんね。
藤井くん慌てすぎるから、つい』
お互いに謝って、お互いに笑って。
苦手だと思っていたのに、不思議と藤井くんとは自然に笑い合えていた。
「次はー…くじ引きでもやる?」
『くじ?お祭りにそんなのあるの?』
「ほんまに知らんねや。
おもろいで?景品とかと交換できるし」
『やってみたい!』
「ふふっ、やってみよか」
今日は笑顔を沢山見る日。
そして、沢山笑う日だ。
「ん、こういうとこ」
『わあ、初めて来た。
すごいね!いろんなのがある!』
「ははっ、興奮しすぎやって」
初めてやったくじは、どれを選ぼうかすごく迷って。
すんなりと引いた藤井くんにすごく驚いた。
私がもらった景品は、筆箱とおまけの缶バッチ。
藤井くんは、クマのぬいぐるみをもらっていた。
『藤井くん、クマさんだって』
「男でこの歳やのにぬいぐるみって困るわあ」
『でもこのクマ可愛いよ?』
笑いながらクマのぬいぐるみをつついていると、ずいっとクマがこちらに突き出される。
ぱっと藤井くんの方を見れば、なぜかクマとは反対にそっぽを向いていた。
「あげる、このクマ」
ぶっきらぼうに言われたその言葉に、自分でも笑顔になっていくのが分かった。
『いいの?本当に?』
「ぬいぐるみ俺いらんし」
『ありがとう、大切にするね!』
「…ん」
ぎゅっと抱きしめたクマ。
ちょっとだけ藤井くんの香りがした。
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凜憧(プロフ) - まさなさん» ありがとうございます。私も今は徐々に自分を奮い立たせてなんとか行ってます…笑 少しでもお力になれるよう、これからも執筆を続けて参ります。 (2019年12月7日 1時) (レス) id: f3cbf63448 (このIDを非表示/違反報告)
まさな(プロフ) - 凜憧さん» あれ、読んでくれてるんですか!?嬉しいです!海の滴のあとがきで泣きました。私も数ヵ月前まで保健室登校だったので、凛憧さんの気持ちが分かりました。いつまでも応援してます (2019年12月7日 1時) (レス) id: 709458c7d0 (このIDを非表示/違反報告)
凜憧(プロフ) - まさなさん» なんて嬉しいことを言ってくださるんですか…!大ファンだなんて、もう泣きそうなくらい嬉しい言葉です… チラッと作品の名前を拝見させていただいたのですが、ままがむかえにこなかった。という作品、私読んでおります!!笑 お互い頑張りましょう! (2019年12月7日 0時) (レス) id: f3cbf63448 (このIDを非表示/違反報告)
まさな(プロフ) - 『海の滴《紫》』も読んでるんですよ。『夏恋注意報《赤》』も読んでます。そして他の作品もすべて読んでます。私って凛憧さんの大ファンじゃないですか?(唐突)大好きです!頑張って下さい!応援してます(о´∀`о) (2019年12月6日 22時) (レス) id: 709458c7d0 (このIDを非表示/違反報告)
凜憧(プロフ) - ばと担さん» ありがとうございます!わ、キュンキュンしてもらえてよかったです!嬉しいです、頑張らせていただきます! (2019年7月9日 11時) (レス) id: f3cbf63448 (このIDを非表示/違反報告)
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