第22話「誇りは時に呪い」 ページ30
Aside
どうやら声が聞こえたのは私だけらしい。私は声のした方へ歩き出した。
ルディ「…？Aさん…？」
さっきは遠くて気づかなかったが、声のした方へ歩いていくと2人が倒れているのが見えた。
声の主は手前に倒れている部下だった。片足がなく、腹を噛まれていて僅かに息をしている程度だ。そしてもう一人は奥に倒れているが、既に息はしていなかった。
「は、ん…ちょう……」
私はゆっくりとそいつの近くに寄り、地面に片膝をつけた。
A「…なんだ」
「…お、れ……お、れは…」
A「……」
絞り出すように言いながらこちらに伸ばしてくる手を、私は力強く掴んだ。
「…俺は……役、に…立て、ましたか…」
不安そうな、でもどこか期待しているような目で私を見てくる。私はそれに応えるようにまっすぐと目を見据える。
A「…あぁ、お前は役に立った。人類のために力を尽くした。お前の死は、決して無駄にはしない。お前の死には意味があったと言えるように…
──必ず、私は巨人を絶滅させると約束する」
私はそう言うと、フッと笑いかける。
A「だからもう、ゆっくり休め。お前はよく頑張ったよ」
優しく笑いかければ、目を見開き涙を流す彼。
「…おれ、は…A班長、の……部下、で…よかった……」
A「＿＿！」
涙を流し笑顔でそう言った彼は、安心したように眠りについた。
──“その言葉”を聞いた瞬間、彼女は一瞬瞳を揺らした。果たしてその言葉は、Aにとって
…いつもそうだ。私の部下になった奴はみんな最後に、“あなたの部下でよかった”と言う。私のした選択で死んだのに…私の巨人を引き寄せる体質のせいで死んだのに…私の部下になったばかりに命を落とした。私は、優秀な部下達を大勢死なせた……最低な、クソ野郎なのに。
……私は、お前らが思ってるような…優しい奴でも、善い人間でもないんだよ＿＿＿＿＿。
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作者名：大福モチ | 作成日時：2023年10月29日 15時
