第21話「正しい選択とは」 ページ29
Aside
馬を走らせていると霧の向こうにエルヴィンの姿を捉えた。
A「エルヴィン！！」
エルヴィン「！？…Aか！」
そこにはエルヴィンの他にミケもいた。私は馬を止めると、エルヴィンに話しかける。
A「オイ、どうすんだ。こんな大雨じゃ信煙弾は使えねぇし、陣形だって機能してねぇだろ」
エルヴィン「…あぁ。各隊とも連絡が取れていない。一度陣形を閉じる」
A「了解だ」
私は手網を引いて来た道へ馬を向ける。
A「私は班と合流して伝令を回す」
エルヴィン「私も行こう。ミケ」
ミケ「あぁ」
それから私はエルヴィン達と共に班のもとへ馬を走らせた。
﹊ ﹊ ﹊ ﹊ ﹊ ﹊ ﹊ ﹊
少し霧が晴れた場所へ出ると私は手網を引いて馬を止める。
ふと下に違和感を感じ目を向けると、そこには無残な一人の死体が転がっていた。それは、紛れもない私の部下だった。私はそれを、静かに見下ろす。
──光のない、そのくすんだ目は…一体何を映しているのだろうか。何を、思っているのだろうか…。
A「………」
ゆっくりと周りを見渡せば蒸発した2体の巨人の跡がある。…そう、私が班を離れている間にやられたのだ。
ルディ「…A、さんっ……すみません…班を、守れませんでした…」
マナ「すみません…」
声がした方に目を向けると、怪我を負っているルディとマナがいた。所々血が出ているものの、無事そうだった。
A「…無事ならいい」
私は静かにそう告げると、ルディ達は悔しそうに顔を歪めた。そして私は、ルディ達がやって来たのとは反対の方を見る。
A「…生存者は？」
ルディ「……いえ…いないかと」
A「…そうか」
小さくそうこぼすと、私は馬から降りて目の前に転がっている既に息のない部下のもとへ行き、片膝をつける。そして調査兵団の紋章、こいつらが生きた証である自由の翼のエンブレムを切り取り、それを自身の胸ポケットに入れた。
A「………」
…そんな時だった。
「……Aッ……班、長…」
＿＿＿＿微かに、
私の名を呼ぶ声が聞こえた。
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作者名：大福モチ | 作成日時：2023年10月29日 15時
