第15話「記憶」 ページ22
Aside
A「…とは言ったものの、正直この記憶が正しいのか定かじゃないんだ。記憶が断片的に抜けててね」
リヴァイ「…構わねぇ」
A「…わかった。……じゃあまず、私の持つ力について。私は耳が良くてね、巨人の足音や気配がわかる。それに加え、身体能力が高く身体が人よりズバ抜けて丈夫なんだ。だから今までもしぶとく生き残ってきた。仲間は死んでいくのに、私ばかりが生き残る。こんなクソみてぇな血筋のおかげでな。あと、私はどうやら巨人を引き寄せる体質みたいなんだよ。…そのせいで大勢の部下が死んだ。
……これらすべて、血筋の影響だと私は考えてる。一族と巨人の関係も、わからないことだらけだ。でも、それを知ろうにも父さんはいない、ヴァレンタイン家について記された書物も瓦礫の下。……お手上げってわけさ」
リヴァイ「………なぜ記憶が断片的なんだ？そんな大事なこと、あの人が話していないとは思えねぇ」
A「………話したよ、私に。全てではないけど。一族のこと、話してた…はずなんだ」
リヴァイ「……どういうことだ」
A「その記憶が、断片的なんだよ。その記憶だけ抜き去られたみたいに忘れてるんだ」
リヴァイ「……そんなことありえるのか？」
A「…わからない。でも今、それが起こっている…。父さんは忘れろって言っていた。……だから？」
リヴァイ「………要は何もわかってねぇってことか」
A「…そういうこと。記憶を遡っても、何一つ思い出せない。私達一族がなんのために生まれ、なんのためにこの力を持っているのか……」
リヴァイ「………めんどくせぇものを残して逝っちまったんだな、てめぇの親父は」
A「ほんとにねぇー…。……この目も、一族の特徴らしくてさ。アザも、一族の証だと父さんが言っていた」
そう言って、私は自身の首に巻いているマフラーを下げ、リヴァイにアザを見せる。
A「このアザのことも、何か言っていたのは覚えてるのになんだったのか思い出せない…」
クソっ、と私は頭を抱える。そんな時、ふと思ったことをリヴァイに問いかけた。
A「…そういや、ケニーはどうしてる？私がクソ夫婦に引き取られてから一度会ったんだけど、それっきりでさ」
リヴァイ「……知らねぇ。ヤツは俺の前からも消えた」
A「…そっか」
それからしばらく、2人の間に沈黙が流れた。
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作者名：大福モチ | 作成日時：2023年10月29日 15時
