第5話「嫌いなあいつ」 ページ12
─NO side─
「……まぁ、任務完了ってことで。さっ、帰ろ帰ろ」
眼帯の女はそう言って足早にその場を去ろうと歩き出す。
「あっ、待ってくださいよAさん！」
「あのリヴァイって人と知り合いなんですか？もしかして地下街に来たことあるのって…」
「……っはぁ〜〜〜〜…ほんとお前らは…」
まったく、と眼帯の女は頭を抱える。少し考える素振りを見せると、口を開いた。
「………昔、あいつと遊んだ時期がある」
「え！？」
「……まだガキだった頃の話だ。だから覚えてないだろうと思ってたのに…私も私なら、あいつもあいつだな」
と、どこか懐かしむような悲しむような、そんな風に笑うの眼帯の女に、部下2人は不思議そうな顔で見つめていた。
﹊ ﹊ ﹊ ﹊ ﹊ ﹊ ﹊ ﹊
「……オイ、あいつはいつからいるんだ」
「Aか？…かなり前だな。それがどうした？」
「………なんでもねぇ」
そう言いながらも、小柄な男は部下2人と歩く眼帯の女を見て睨みつつもどこか懐かしむように、それは怒っているような目にも見えた。
「(……まさか)」
「(まさか…)」
「「(あいつが生きてるとはな)」」
そう。この2人はお互いがお互いに死んでいると思っていたのだ。
──あの日から、パタリと来なくなったA。
──たまに地下街へやって来ていたが、一度も姿を見せなかったリヴァイ。
お互い会うこともなくなった2人が、今こうして敵として対峙し、最終的には共に戦う仲間になったのだ。しかも、互いに言いたいことが山ほどある2人。そんな2人が一番に思ったこと。
「「(俺は／私はあいつが嫌いだ)」」
こうなったのにも色々な理由がある。例を挙げるならリヴァイはAのあのヘラヘラした態度が気に食わない(=腹が立つ)。Aはあの頑固にもほどがあんだろという態度が気に食わない(=腹が立つ)。そしてお互いに煽るため、もっと気に食わない(=クソ腹立つ)。
そう。この時もう既に仲が悪かったのである。
これが徐々に加速していき、のちに顔を合わせる度に喧嘩をするほどまで仲が悪くなったのだ。
そんな2人だが、内に秘めた思いは同じ。
＿＿＿＿“ 生きていてくれてよかった ”。
これだけなのだ。ただただ、生きていたことが嬉しい。そう思うものの、絶対に本人に伝えることはないだろう。断じてないと言える。どこまでも素直じゃない、2人である。
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作者名：大福モチ | 作成日時：2023年10月29日 15時
