32 朝 ページ32
朝食付きのコースのホテルをチェックインしたので、7時15分に1階広場にいた。蒼い絨毯に、17世紀のヨーロッパを思わせるシャンデリア、壁の彫刻。音楽もなし、テレビもなし、ラジオもなし、微風の暖房設備と、太陽の光が射しこむ窓。
白のテーブルクロスがかかった四角のテーブルを囲み、俺はキャロルを前に、左手をジェームズに座る。ビアンカは昨夜何かあったのか、ずっとジェームズを睨んで俺を見ようともしなかった。時折、ふたりは眉間に皺を寄せて唇読術で会話をしていた。
キャロルは俺とアイコンタクトをとり、肩をすくめていた。俺は唇を曲げて、同じく肩をすくめてふたりは何なのだと疑問に思った。これが、ふたりなのかもしれないが――。
運ばれてきたパンをちぎって投げ出した時には、
(コイツ等小学生だな!!)
俺は怒るというより、笑いが込み上げて来て、「ガハハ」と言いながらコップの水をジェームズにかけた。俺は椅子から転げ落ちた。
するとふたりは、きょとんとした顔になり笑っている俺を凝視していた。ふたりには、何が起こっているのか見当もつかなかっただろう。
何故かって、俺自身もどうして自分が笑っているのか分からないからだ!
「ほんと馬鹿で困るのよね」
キャロルはグラスの水を飲みながら、この状況を客観視していた。右手には食べかけのパンが握られている。俺はネジがはずれてしまったように、何がおかしい訳でもなく笑い続けていた。
笑い終わった後、自室へと引き戻す。俺はまだ腹が痛くて、喋るのもそれに影響している。エレベーターに乗っている間、廊下を歩いている間とジェームズは俺の背中をバシバシと叩き続けた。広場に集まった人達全員と言っても良い、それだけの人が笑っている俺を見ていたからだ。
後ろを歩く女性陣ふたりに視線を転じると、落ち着いたムードになっていた。冷静になったビアンカは、キャロルに昨日のことを話している。キャロルは口元に笑みを浮かべて、コクコクと頷いている。
部屋のドアを最後尾のビアンカが閉め、俺は間髪を入れずに口を開ける。
「それで、今日の仕事はどうする?」
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あに(プロフ) - いえいえ。こちらこそ、お忙しいところ申し訳ありません。 (2015年11月1日 10時) (レス) id: b6e044a433 (このIDを非表示/違反報告)
レイチェル・ハジェンズ(プロフ) - あにさん» ありがとうございます。私もコイツらのこと好きです(°▽°)/あに先生の小説の評価、遅くなって申し訳ありません。これから暫く暇になると思うので一気読みしますb (2015年11月1日 8時) (レス) id: 6298628eb9 (このIDを非表示/違反報告)
あに(プロフ) - キャラクターの台詞がとても好きです。そして、映画を見ているような感覚です。文を読むとその場の様子が浮かんできて、感動しました!このサイトではめったにこういう作品と出合うことがめったにないので……。 (2015年11月1日 0時) (レス) id: b6e044a433 (このIDを非表示/違反報告)
レイチェル・ハジェンズ(プロフ) - 阿吽さん» コメントありがとうございます(*´∇`*) 今振り替えると、文の羅列ばかりで配列に工夫がないような……。でも今のバランスなければ凄いという言葉は出ないはず。難しい所ですね。 読んでくださってありがとうございました! (2014年11月5日 23時) (レス) id: 5c4ab849ae (このIDを非表示/違反報告)
阿吽(プロフ) - 凄い…!!あ、イベントに参加登録してくれてありがとうございます!!!! (2014年11月5日 23時) (レス) id: e6f590558d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:レイチェル・ハジェンズ | 作者ホームページ:https://twitter.com/seshiru777777
作成日時:2014年8月7日 15時