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俺は一歩近づき、ジェームズの隣に行って背中をぽんと叩く。
「この仕事に女はひっこんでろ。そういう仕事場所に行くんだ」
「いいえ」 キャロルは言った。
「私も貴方もこの仕事には必要だわ」
ジェームズはキツくビアンカを睨みつけ、
「血の生グサイ臭いがする所に行くかもしれねーんだ。銃や喧嘩で人が何人も殺される。そんな所でお前は仕事が出来んのか? ビアンカ」
「なめんな。人を殺したことなら私にだってあるさ。ジェームズ」
俺は皆の眼を見て、様子を伺い、
「中でコーヒーでも飲もう。出入り口で話し込むのは迷惑だろう」
ドアを開け、中に入って店員に珈琲を頼む。3人は奥にある席に腰掛けていた。女達は横に並んで座り、俺達はそれに真似る。お盆でコーヒーを持って行き、テーブルの中心においた。席にはコンビニのチラシや、観葉植物が置いてあった。
他に客は釣り道具を持った太った男がふたり、あとノートパソコンを持ったセールスマンがひとりだけ。俺は、会話を聞かれてはまずいと天井の薄いカーテンを引っ張った。
「おふたりさんは、何故ついてこようと思ったんだ。今日の仕事はどうしたんだ?」
「急いで片付けた。元々、電話で片付けられる簡単な話だったから」
「遠出の人もいなかったしよ。車で30分とか」
「そういう問題かよぉ」
ジェームズは不機嫌にも、コーヒーを啜って目を逸らす。俺はカーテンを引っ張るのをやめ、手でジェームズの頭を回転させた。そして、椅子に座って席をひく。
「女が行っちゃいけないほど、危険な仕事なの?」
「ああ。だが、生きて帰れる」
俺は溜息混じりに、
「根っから腐った連中が蛆虫みたいに寄って来てる所に行く。お前は俺の嫁だぞ? そんな所にもみくちゃにされるなんて……」
「そんな野蛮な所に行く夫の、私は妻なのよ」
「だーっ、もう。キャロル! 潔癖症のお前が何言ってんだ」
ビアンカが眉に深い皺を作り、
「ロバート。キャロルは、そんな所に行く覚悟はもう出来てるっつってんだよ。どれだけお前を愛してると思ってるんだ。それなのにお前はキャロルを頭ごなしに何でも否定して」
キャロルは、肩からかけていた深緑のバッグに手をつっこみ、テーブルにワルサーP38を転がす。キャロルが改心する前に愛用していたものだ。
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あに(プロフ) - いえいえ。こちらこそ、お忙しいところ申し訳ありません。 (2015年11月1日 10時) (レス) id: b6e044a433 (このIDを非表示/違反報告)
レイチェル・ハジェンズ(プロフ) - あにさん» ありがとうございます。私もコイツらのこと好きです(°▽°)/あに先生の小説の評価、遅くなって申し訳ありません。これから暫く暇になると思うので一気読みしますb (2015年11月1日 8時) (レス) id: 6298628eb9 (このIDを非表示/違反報告)
あに(プロフ) - キャラクターの台詞がとても好きです。そして、映画を見ているような感覚です。文を読むとその場の様子が浮かんできて、感動しました!このサイトではめったにこういう作品と出合うことがめったにないので……。 (2015年11月1日 0時) (レス) id: b6e044a433 (このIDを非表示/違反報告)
レイチェル・ハジェンズ(プロフ) - 阿吽さん» コメントありがとうございます(*´∇`*) 今振り替えると、文の羅列ばかりで配列に工夫がないような……。でも今のバランスなければ凄いという言葉は出ないはず。難しい所ですね。 読んでくださってありがとうございました! (2014年11月5日 23時) (レス) id: 5c4ab849ae (このIDを非表示/違反報告)
阿吽(プロフ) - 凄い…!!あ、イベントに参加登録してくれてありがとうございます!!!! (2014年11月5日 23時) (レス) id: e6f590558d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:レイチェル・ハジェンズ | 作者ホームページ:https://twitter.com/seshiru777777
作成日時:2014年8月7日 15時