女子トイレにいる男の子。【名前変換オリジナル】

エピローグ ページ32

「ねえ、中村くん」

「あはは、もうAも中村でしょ?」

「あ、そうでした……海斗」

「ん、なに?」

「あのね、今日病院行ってきてね……赤ちゃんできてました‼︎」



高校、大学を卒業し先生となった私は、幽ちゃんと出会った日に告白を見てしまった好きな人ーー中村海斗と結婚した。



「ほっ、本当に⁉︎ 子供……俺、パパになるんだ‼︎」

「うんっ‼︎ 私もママになるんですねっ‼︎」

「あぁ、あぁ。A、本当にありがとう‼︎ そして……これからもよろしくね」

「うふふ、こちらこそ。
あ、赤ちゃんね男の子なんですけど、名前……」

「何か良い案があるの?」

「うん。あのね、“ゆう”ってどうかな?」



トイレで出会った彼と、同じ名前。



「ゆう、か……。いいね。どんな字を書くの?」

「悠々自適の“悠”っていう字。長く続く、っていう意味があるの。
前話した幽ちゃんの話覚えてる?」

「うん。Aが女子トイレで会った男の子だよね」

「そう。私たちが注いだ愛をずっと抱いて、家庭を築いた時に家族にその愛をたくさん渡せる子になってほしいなって思って」

「“悠”……。うん、とっても素敵な名前だと思う」





それから9ヶ月後。



「Aさん、おめでとうございます‼︎ とっても元気な男の子ですよ」

「おぎゃあ、おぎゃあ‼︎」

「悠。初めまして」



生まれてきた男の子から伝わる体温が優しくてあったかくて、なんだか幽ちゃんを思い出した。



ーー幽ちゃん、おかえりなさい。



「Aありがとう‼︎ 悠、会いたかったよー」

「もう、海斗ってば……ふふっ」



涙のせいか、それとも明るい照明のせいか。悠はとてもキラキラ光って見えた。

悠、君の心はママとパパがきっと愛で満たしてみせる。あったかく、ポカポカに。
だから、悠はその熱で大切な人を温めてあげてね。
悠も、悠の子供もその子供も……ずっとずっと、愛で溢れた幸せな人生が送れますように。

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