特別。 ページ41
「ーーーーーっ♪」
対象は僕等じゃないから被害を受けないが、Aの目の前にいた奴らはAがラップを始めた途端に倒れ始める。残り1人…そこまで行った時、残り1人が口を開いた。
「酷いっ…!それにラップバトルは相手もマイクを持ってない限り違法なはずよっ!法的処罰を受けるのはあんたでしょっ!?」
「………。」
喚き出す1人をAはただじっと見つめていた。
「………あぁっ!貴方、思い出したわ!」
「へ?」
「ぼんやりとだけど…貴方の周りに沢山の友達がいて、貴方も可愛い分類にいて…貴方がどんな性格をしてるかとか、何時もの貴方を見てずっと尊敬してたの!」
何を言い出しているんだ?僕は理解が追いつかなくてただ呆然とする。
「なら、私を助けて__」
「ほんと人を散々殴り捨ててマウント取ってくるクズな奴だってある意味尊敬してたの♡ ……助けてなんて、甘い事言ってくれるじゃない?」
睨み付けたAは誹謗中傷、罵倒、哀れみを混ぜ込んだリリックを謳った…が、君は泣いていた。一粒、また一粒と溢れる涙。最後の1人は既に意識を失っていた。ラップを止めた君。
振り返りざま君と僕の視線が重なった。
気付いた時にはAがどんどん僕の方へ歩いてくる。思わず僕も席を立って歩み寄る。
あと30cm…そこまで来てAは手を伸ばして来た。そっと僕の頰を包み込む。
「僕、君のこと知ってる…窓から見えた子だ!」
『っ!…それだけ?君の中にいる僕はその子だけ?』
「ん?」
『A。』
「僕の名前っ…!」
『そうだよ、僕の大好きなA。戻っておいで。』
「あっ…ぇ、…なん、で…」
『A。』
「やだ、名前…や、だ…」
後退りしだすAを抱き寄せた。
「山田三郎っ!巫山戯た真似をするなっ!」
勘解由小路無花果がこっちへ向かって来た。僕はAの腕を掴んで走りだす。教室を出てあいつらが来ないところまで走った。
気付いて立ち止まるそこは閑静な住宅街。
肩で息をする僕らの呼吸が一層大きく聞こえた。Aは人造人間である、変わらない現実だ。でもそんなものは関係ない。自分の愛する人が何であれそれはAに変わり無いのだから。世間の目は拭えない。それを分かった上で僕は今でもAが大好きなんだ。居なくなってからぽっかり空いてしまった2人の時間をまた2人で埋めたい、そう思うのは普通だろう?
僕は振り返り、Aを強く抱き締めた。
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許(元はく) - めちゃくちゃ感動しました。今涙流してます(笑)途中ヤンデレみたいで怖いなって思ってたんですけど、ストーリー性とかもあってとても面白かったです。お疲れ様でした。 (2020年7月7日 0時) (レス) id: 4d0b20ffc1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:音夜 | 作成日時:2020年5月4日 0時