失敗作ちゃんと神童くん。Ⅱ (ページ39)

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ラップ。ページ39

『大丈夫だから』

「ほんと？」

『うん！任せて！』

「絶対に無理しないでっ…」

『大丈夫だって！』

今にも泣きそうな乱数をぎゅっと抱きしめた。やっと落ち着いた乱数を隣に僕は無花果様に聞いた。

『無花果様、仕事内容をお聞きしても？』

「あぁ。A、お前は此奴らに見覚えはないか？」

そう言って広げられた名前が書いた資料。

『鹿海莉緒、佐々木木葉、薬師寺寧々、林道綾女、榎本加奈子、羅城沙也加…この方々は？』

「名前だけでは分からんか…おい、写真を。」

そう言って次は広げられた六枚の写真。その瞬間、体がきゅっとなった。締め付けられる様な感覚に思わず身を引いた。

「うるさいっ！！！！」
「はぁ？イラつく。」
「何様のつもりですか～w」
「キッモ」
「調子のんなよ」
「は？身の程知らずもいい加減にしろよ」
「逃がさないよー」
「死ねば？」
「そっち持って！」
「カッターは？誰が持ってる？」
「あっ！私だよ！」
「は？今なんて？もう良い。顔ごと切りつけよ」

突如頭に甲高い声が響き始め耳を塞ぐ。

『いや、いや…うるさい、うるさいっ！！！』

「Aっ！」

「飴村、黙れっ！」

『やだっ、こ、来ないで…近づかないで…』

段々と呼吸が浅くなって首元を引っ掻く。

『～～～！！！』

次の瞬間、周りが静かになった。

何が起こったのかと顔を上げると、無花果様も乱数も局員も皆んな目を見開いてこちらを見て居た。

『えっと…』

「い、今の…A…？」

『へっ…？』

「A、今から私とイケブクロに向かうぞ。それが仕事だ。」

『えっと、今、何があったんですか？』

訳が分からず無花果様に問う。

「いいか、A。よく聞け。お前のラップ能力は計り知れたものじゃない。現に今もリリックを紡いで居たんだ。無自覚か？」

『ラップ…僕がっ？！』

「あぁ。その力で今から下郎共を葬りに行くんだ。Aなら出来る。」

『下郎共…ですか…？』

「そうだ。この世に…Aの生きる世界には要らんゴミ共だ。A、お前は誰かを傷つける奴等は嫌いか？」

『えぇ、勿論です。』

「なら大丈夫だ。その鬱憤を思う存分ぶち撒けろ。」

『分かりました。…では、乱数。行って来ます。僕が帰って来るまで家で待っててくれる？おかえりって言ってくれる？』

「…勿論だよ。待ってる、待ってるから」

『では、無花果様。』

「ああ。行くぞ。」

そうして僕はマイクを握り中王区の壁の外へ足を踏み入れた。