失敗作ちゃんと神童くん。Ⅱ (ページ20)

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弱っている君。ページ20

神宮寺さんに連れられ、診察室に入った。少しして、母さんと父さんも来た。

「先生っ、Aはっ」

切羽詰まった顔の母さんを父さんが宥めた。

「四十物君、送ったカルテは持って来て居るかな？」

『あっ、持ってるっす！』

自分は持って来ていたカルテを神宮寺さんに渡した。

「ありがとう。さて、小殿神君ならこれを見て分かるかな？」

「はい、粗方…」

さっぱり自分にはわからないが、きっと深刻なんだろう…母さんの表情を見て入れば分かる。

「精神面でもそうだが、今回は人体にも酷い損傷が見受けられるね…暫く入院という形になるんだが、いいかな？」

「はいっ、お願いします」

母さんと父さんが深々と頭を下げた。

_____

あれから数時間経って手術室から神宮寺さんと数名の看護師さん達がぞろぞろと出て来た。

またすぐに母さんと父さんは部屋に呼ばれていった。

丁度居た看護師さんにAちゃんに会えないかと許可を取り、病室へ足を運んだ。

『Aちゃん…？入るね…』

そっとドアを開く。
暗い病室の中に差し込む月明かりに照らされる病院服に着替えベッドの上に横たわるAちゃん。袖から覗く色白の細い腕には何本もの管。足首には無数の包帯。

昔の自分よりも酷い姿に徐々に視界が滲んでいく。

もっと早くに連れ出してあげてれば

もっと早くに気付いてあげてれば

もっとしっかりした兄でいれてれば

もっと、もっと、もっと…

自分が強ければ…

胸の中がどんどん黒くなる。

ベッドの端に腰掛け、そっと頭を撫でた。

『大丈夫だよっ…僕が着いてるからねっ…』

きっと泣きたいのはAちゃんの方なのに。

いつだって君は強かった。

自分だって泣いているのに人のことを何より心配するその優しさ。

苦しいのに、痛いのに、何でも1人で解決しようとする要領の悪さ。

誰にも迷惑をかけない様に1人でひっそりと泣く健気さ。

自分の夢をしっかり見つけられるその頼もしさ。

そんな君はきっと誰よりも脆くて弱くて、優しい心を持ってるんだね。

そんな君が僕は大好きだよ。

とっても大事な1人の妹。