失敗作ちゃんと神童くん。Ⅱ (ページ1)

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カウンセリング。ページ1

寂雷side

彼女は静かに話し始めた。

「今まで通りじゃまた虐められる、そう思って人間関係には凄く神経使っていたんです。でもある日唐突に自分に嫌気が指したんです。人の意見に流されて、何の主張も出来無い自分って意味を成さないんじゃないかって。だから学級委員になって副会長になって、少しでも変わりたかったんです。少しでも変わって、彼奴ら…虐めてきた奴等全員見返してやろうと思ったんですけど…やっぱりダメでした。」

彼女は自嘲気味に笑う。私は終始ただ静かに彼女の話に耳を傾けた。だが、私と話す時位ありのままの彼女になって欲しくて口を開く。

『Aちゃん、私の前では無理して隠す必要も無いんだよ。大丈夫。私と話す時のままのAちゃんで話してごらん。」

大丈夫その一言で彼女の瞳に少し光が蘇る。彼女は困った様に笑い、話し始めた。

「先生、僕は自分が嫌いです。こんな風に自分の事も僕呼びになってしまっている事も。虐められても何も変われない事も。全部、全部、全部嫌いです。偶に思うんです。死んでしまえばって…兄弟揃って虐められるなんて。兄弟は似るものですね。」

『お兄さんには話して居ないのかい？』

「まさか。話したら、にぃに、二度と立ち直れなくなりますよ。妹が自分と同じくいじめられっ子なんて知ったら今の倍泣き虫になっちゃいます。」

『そうだね。獄も慰めきれなくなっちゃうね。』

彼女は可笑しそうに笑っていた。
Aちゃんのお兄さんはナゴヤディビジョン Bad Ass Temple 14thMoon 四十物十四君。訳あって苗字は違うらしがね。数年程前に獄から相談を受けた。それがまさかAちゃんのお兄さんだなんて吃驚した。確かに2人とも容姿も似ている。私は俯いたままのAちゃんに優しく話し掛けた。

『Aちゃん、死のうだなんてもう考えちゃダメだよ。妹さんのあとを追いかけてしまえば本当にもう戻れなくなってしまう。どんなに辛くても、その倍、君を大事に思ってくれる人が居るんだよ。辛くなったらいつでもおいで。私で良ければ話を聞くよ。わかったかい？』

「…はい。」

『じゃあお母さんの所へ戻ろうか。』

カウンセリングを終了し、小殿神君の所へ行く。その日は少し検査を受けてもらった。

『また今度検査結果を送りますね。』

「ありがとうございます、先生。」

「ありがとうございました。」

彼女達を見送り、診察室へ戻る。

今日のカウンセリング内容を書いたカルテを見ながら仕事を終えた。