その兄妹､悉く狂気｡【太宰治】

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私は机電灯の下に置かれていた封筒を手に取った｡
茶色の､事務連絡なんかに使う質素な封筒｡
無駄が無いところがAらしい｡

太宰「ごめんね､A｡」

決別の意を込めてだろうか｡
封筒には"太宰へ"とAの単調な美しい字で書かれている｡
こうやって見ると､私の周りはAだらけ｡
ここ最近忙しかったこともあってろくな食事を摂ってない｡
いつもは忙しくてもAが作ってくれてた｡
嗚呼､こんなことになるって､一寸思ってたんだから､
最後に君の料理を味わって食べておけば良かったな､後悔｡

君は､何て書いたんだい?

恨みの言葉でも書かれているのかな｡

それとも………いや､愛の言葉なんて､望み過ぎだね｡

…君は､莫迦だ｡

もう一回､Aにそう罵られたかった｡

嫌悪の言葉を吐いて口喧嘩をしたかった｡

織田作を追って､正解だったのだよね?

解らない､

解らないよ､A｡

もう､行こうかな｡

君の面影から逃げる為に｡

君の匂いから､生活から消える為に｡




太宰「さよなら､太宰｡」






何故か､私には､さよならと呟いた声がはもっていた気がして｡




結局､どうしようもなく涙が出た｡

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