弐百玖拾玖 ページ26
「夏也が起きるまで落ち着かないからッて珍しく報告書書いてるよ。にしても、アンタを運んで来た奴等といい、太宰といい……。随分愛されてるねェ」
「あはは……」
太宰が仕事してるのもそれなりの驚きだが、それよりも与謝野に云われた事も中々だ。わざわざ藪を突きたくはないので笑って流した。それよりも気になる事があったというのもあるが。
彼女の言と間から溢れる笑声から察するに、夏也の預かり知れぬところで一騒ぎあったのは想像に容易い。
ちゅーっと些か頼りない力で水を吸いながら何となく何が合ったかを考え始めた。
夏也の記憶があるのは泉の繰る小型機が白鯨衝突した少し後までだ。自身の異能を解除やら再発動の都合があった為、海面に叩き付けられるまでの事は良く覚えていた。しかし、ならどの時点から記憶が無いのかと問われたら返答に困る。
泉や中島等の離脱後は異能を展開し続けていた。夏也自身、正直な所何処まで耐えられていたのか全くもって不明なのである。まぁ、現状を見る限り二次災害は起きていないようだけれど。
ただ、予想としては恐らく自分は一度死んだと思っている。話を聞く限りでは中原が一枚噛んでいるのは間違いない。けれども、何か腑に落ちない。
「中原 中也とあの派手な髪色した双子に感謝するンだね。あと一歩遅けりャ妾の異能も間に合わなかった」
派手な髪色且つ双子、そう聞いた夏也の脳裏に浮かんだのは二人の少女。あの二人が関わっていたなら自身の生存も納得は出来る。出来るが……何故あの少女等が此度の騒動に関わっているのかが全く分からない。
出て来る理由なんて無さそうな上に、姉妹を出す程戦況は悪化していなかった筈だ。はて、何故だろうと思案しかけたが、それよりも確認することが夏也にはあった。
「……もしかして、鏡から出て来ましたか」
「良く分かったねェ。三人とも血相変えて医務室の鏡から飛び込んで来たよ。そンで、夏也を見た太宰も面白い程顔色失くしててね。アンタには悪いが愉快だったよ」
「ふふ、与謝野さんもお人が悪いですね。まぁ、俺も見たかったです。慌てる太宰と中也」
水を両手で持ち、クスクス笑う夏也。反対に与謝野の表情が変わっていった。
「そうかい。あの二人が慌てるッてのは大体夏也が死に掛けてる時だもンねェ? アンタがその目で見る事は叶わないってか」
「……与謝野さん、怒ってます?」
「へぇ? 察しの良い男は嫌いじゃないよ。なんなら理由も当ててご覧」
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みゃあ(プロフ) - 狐猫音。さん» 度々のコメントありがとうございます!少しでも楽しんで頂けたのなら作者冥利に尽きます。お言葉の一つ一つが物凄く嬉しいです。読んで頂き、ありがとうございます。 (2018年12月26日 14時) (レス) id: 9721615f06 (このIDを非表示/違反報告)
狐猫音。(プロフ) - 限定公開……!クリスマスは楽しいですね。番外編という最高のクリスマスプレゼントをありがとうございます。とても楽しんで読むことができました。これからも更新頑張ってください。 (2018年12月26日 12時) (レス) id: 1402817ddd (このIDを非表示/違反報告)
みゃあ(プロフ) - myuさん» 有り難いお言葉です……!展開に自信なかったので少し安心しました!更新頑張ります。 (2018年11月4日 11時) (レス) id: 9721615f06 (このIDを非表示/違反報告)
myu - とっても面白い作品です。更新頑張ってください (2018年11月3日 16時) (レス) id: fe06e07095 (このIDを非表示/違反報告)
みゃあ(プロフ) - ЯRさん» コメントありがとございます!そう言って頂けてとても嬉しいです。ありがとうございます! (2018年8月8日 15時) (レス) id: 9721615f06 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みゃあ | 作成日時:2018年4月30日 21時